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米中貿易戦争は痛み分け、対立激化は米経済にも甚大ダメージ―米経済金融界が“休戦”要求「このままでは覇権国家から凋落する」

配信日時:2018年12月3日(月) 5時0分
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トランプ米大統領と中国の習近平国家主席はブエノスアイレスで会談し、米国が来年1月に予定していた追加関税措置を猶予することで合意。貿易赤字縮小を公約に掲げるトランプ氏と貿易摩擦の激化を回避したい習氏の思惑が一致し、痛み分けの形となった。

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は12月1日にブエノスアイレスで会談し、米国が来年1月に予定していた追加関税措置を猶予することで合意。米国の対中貿易赤字の縮小に向け、中国が米国から大豆などの農産品を早急に購入することや中国が液化天然ガス(LNG)などのエネルギーや産業製品を購入することも決まった。貿易戦争による両国経済に与えるダメージが拡大する中で、貿易赤字縮小を公約に掲げるトランプ氏と貿易摩擦の激化を回避したい習氏の思惑が一致し、痛み分けの形となった。

トランプ大統領による対中関税引き上げなどの保護主義的な政策と中国の報復措置は、米消費者・製品物価の上昇や株価急落、大豆など農産物価格の急落などの形で米国自身にブーメランのように跳ね返り、米経済にも深刻な打撃を与えている。多くの企業の業績懸念とマーケットの変調は、好景気と株価の上昇を誇示してきたトランプ氏には想定外で、しびれを切らしたトランプ氏が11月2日に習近平中国国家主席に電話し、ブエノスアイレスでの米中首脳会談と打開策協議を持ち掛けた。

米中間選挙で下院の過半数奪回を果たした民主党は2年後の大統領選を見据え対決姿勢を強め、貿易戦争が消費者、企業経営者、農民などの負担になっていることを徹底的に追及する構え。トランプ政権の交渉権限を制約する方針で、同政権にとって懸念材料になっている。

注目すべきは米国経済・金融界の動き。シンガポールで十月上旬に開かれた米通信社ブルームバーグ主催の「ニューエコノミー・フォーラム」はさながらグローバルな国際協調を求める大合唱となった。歴代の米大統領に助言してきたキッシンジャー元国務長官は「米中両国は現在の世界秩序を破壊しかねない対立激化を回避でき、かなり楽観視している」との認識を示した。ブッシュ(息子)政権時代に財務長官を務めたポールソン元財務長官(米ゴールドマン・サックス元CEO)は、貿易や投資での米中対立が結果としてもたらすのは「投資と貿易の自由な流れから世界経済の大きな部分が最終的に締め出されることを恐れている。国を越えたサプライチェーンに対する前例のない政治的圧力」だと警告した。

同フォーラムにはゴールドマン・サックス・グループをはじめ米国の金融大手がこぞって参加、トランプ政権の排他的な保護主義的な政策を非難した。このフォーラムを主催したブルームバーグ社のマイケル・ブルームバーグCEO(元ニューヨーク市長)はもともと共和党所属だったが、このほど民主党に鞍替えし、大統領選出馬を狙っているとされる。

米国では米中貿易戦争によるダメージを懸念した経済金融界の反発は強まるばかり。これに中国側の報復に伴う農産品の大幅値崩れに直面する農業団体が呼応している。この動きは共和党、民主党を問わず党派を超えたものだ。

もともと、現在の経済・金融はグローバルな世界。トランプ政権の主要閣僚や幹部の多くは軍人出身者で固められている。軍人対経済金融界の「分断」と見ることもできる。結局“商売人”でディールを好むトランプ氏は軌道修正を余儀なくされ、中国とひとまず手打ちをせざるを得なくなった。

トランプ政権は最大の対外貿易赤字国である中国だけでなく欧州連合(EU)や日本、カナダなどへの関税を一方的に引き上げることで、アメリカ自身が生み出してきた自由貿易体制を崩し始めた。トランプ氏は「自由貿易体制によって米国は損している」と主張、世界全体の利益に背を向ける。実利を重視する米経済・金融界には「米国では分裂が深刻化し、覇権国家としての凋落が加速する」と懸念する声も強い。(八牧浩行

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