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「興の趣くままに筆を走らせたい」。思考ではなく感覚に忠実であろうとする油彩画家・李静の作品は、作者自身が現実を離れ、たった1人になることができる世界である。連作「空間」に描かれた少女は、まるで心の中に生き続ける、少女のままの作者自身のようだ。
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「興の趣くままに筆を走らせたい」。それが若き女流油彩画家・李静(リー・ジン)の切なる願いである。作品の中の世界は、完全に自分1人の自由に属するものであり、現実からしばし逃れられる1つの空間であり、大人というものはしばしば、1人になれる時間を持ちたいものだ、というのが彼女の意見である。
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「昨今流行のコンセプチュアル・アートとかなんとか…そういうのは気にしない。ただ、自分の心の内を描くだけ」。思考ではなく感覚に忠実にあるために、李の作品は速描が主体となる。比較的早期に描かれた連作「空間」も例に漏れず、彼女の心に潜む1シーン1シーンを素早くファインダーに収めたかのような作品となっている。
心の中にまだずっと生きている少女のままのわたし。少女の冷たいまなざしは、うつろなようであり、怒りを込めているようであり、世の中に醒めているようでもある。せめて、自分の世界の中だけでは、永遠にこのままでいたい。そのまなざしは、大人になることにきっぱりと拒否を示しているようにも見える。(文/山上仁奈)
●李静(リー・ジン)
1976年生まれ、安徽省出身の女流油彩画家。天津美術学院油彩画学部卒業。04年以降、河北工業大学建築・芸術デザイン学院で教鞭を執る。代表作に「空間」など。
写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津)
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