日本の小学生の動画を見た母の目は、少し潤んでいた―中国人学生

日本僑報社    2023年12月17日(日) 10時0分

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共通の感情が日中友好の礎。それを少し理解した母は、すき焼きの生卵を味わってくれた。

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ある昼に家で母の手作り料理を食べていた。大好きな辛い牛肉を一皿すべて食べ切った。そして、私は何かを思い出して母に聞いた。

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「すき焼きを食べたことがある?生卵は不思議だね。牛肉と食べると素敵!」「えっ?ちょっと無理でしょう?生食は、私に絶対無理だ」と母は私に答えた。私の母ばかりでなく、多数の中国人は生食に慣れていない。パスポートすらない私も日本食を実際はたった一度しか食べたことがなかったが、その一度で魅了されたので母にも「ぜひ一度食べてみて」とすすめた。

その後、一つのことが私の頭に浮かんだ。食事の違いのように、国や文化によって違いはいっぱいあるだろう。若者は未知への「好奇心」があっても、没頭できる「体験」がなければ誤解も生じてしまう。一方の年長者は異国の未知なことへの「好奇心」ときっかけがほとんどないので、共感どころか認知できる人も少ない。「やっぱり異国の人が互いに理解するのは難しい」と思わざるを得なかった。同じように、異文化の人と深い友情を築くのも難しい。しかし、わずか数日後、私の考えは変わった。

あの夕方の余暇、私は母と一緒にインターネットの動画を見ていた。ある日本の児童の作文コンクールの動画が私を強くひきつけ、知らず知らずのうちに涙が流れていた。小学校1年生の男の子は幼い声で『てんしのいもうと』という文章を読み、真心を届けようとしていた。彼は兄になろうとし、いつも妹との楽しい未来を幻想していた。だが、母のお腹の中の妹が天国に行ってしまった。この子は世界で一番純粋な言葉で天使の妹への祈りと愛を語った。まさに命の尊さに対する心の訴えだった。

「また、お母さんのお腹にきてね。今度は生まれてきて、一緒に色んなことをしようね」。日本語は全然分からないけど、母は訳文を読んで、目が少し潤んでいた。しばらくして、振り向いて目を擦り、「いい子だね……」と言った。母の温かく柔らかい表情を見て、まだ感動に浸っていた私は、心の中で何かに触れられたようだった。日本語も分からないし、文化も違うが、日本の子供の感情いっぱいな言葉は中国の母を深く感動させることができる。

そう!感情だ!共通の感情がすべての壁を乗り越えられる。これまで私は習慣も文化も越えがたい差異ばかり意識して、物事の本質に対する判断力を失っていた。母のような中国人は永遠に生食を受け入れられないかもしれないが、日本の人と同じ気持ちは分かち合えるのだ。

2008年の汶川大震災は私の故郷にも少なくない影響を与えた。あの日の午後、公園に避難していた私たち一家は、日本が震源地に救援隊を派遣したというニュースを聞いた。その後、テレビで彼らが苦労して助けてくれた人々の姿を見て、私や周囲の人の心が感謝の気持ちに満たされた。東日本大震災が発生してから私の家で一番の心配事も日本の地元住民の生活状況だった。毎日必ずテレビのニュースに注目して心から応援していた。コロナ禍における日本から武漢への支援物資に書かれた「山川異域、風月同天」のメッセージも思い出された。日中の友情は感情にそって脈々とつながっているのだ。

日中国交正常化50周年の今年、私も何か行動を起こしたいと考えた。ちょうど日本語のエッセイ集と絵本を何冊か持っているので、翻訳して家族や友達に紹介してみた。内容は一人暮らしや子育てや恋愛など平凡だが繊細なテーマの文章を選んで、2万字余りを訳し続けた。絵本も1冊中国語に訳した。翻訳の完成度を心配したが、意外にもみんなが共感してくれた。その中には「友達に紹介した」などと話してくれる人もいた。私はこれからも日本人の感情を伝え続けようと思っている。

苦難の前でも、平和な生活の前でも、日中両国民の心は同じであり、その共通の感情が日中友好の礎なのだ。それを少し理解した母は、すき焼きの生卵を味わってくれた。母のように心を開く人が増えると信じている。

■原題:共通の感情を友情の絆にしよう

■執筆者:沈可心(清華大学

※本文は、第18回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集『日中「次の50年」――中国の若者たちが日本語で綴った提言』(段躍中編、日本僑報社、2022年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。


※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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