<コラム・莫邦富の情報潮干狩り>覚えておくべき次期米副大統領のもう一つの名前―賀錦麗

莫邦富    2020年11月13日(金) 15時40分

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賀錦麗。この女性の名前を知っている方は相当の中国通で、しかも国際政治にかなり関心を払っている方だと思う。写真は米国2位の規模を誇るサンフランシスコのチャイナタウン。(撮影:莫邦富)

サンフランシスコの選挙の票は中国語と英語のバイリンガル印刷であり、すべての候補者が自ら「公式中国語氏名」を提供することができるのである。現地選挙管理事務所の中国語スポークスマンの李懿荘氏の説明によれば、選挙に出た候補者が中国名を提供する際、まず著名人の氏名と類似してはならない。もし候補者が中国語の名前を提供しない場合は、選挙管理事務所は翻訳会社に依頼して、その候補者の名前の発音をよりどころにして中国語の名前に翻訳して提供する、という。

写真は英語と中国語が印刷されているサンフランシスコの選挙票

中国語の名前を付けることで、中国系有権者に同じルーツを持つという親近感を抱かせることができ、選挙戦で知名度を高め、こうした有権者の票を獲得しやすくなると判断され、選挙に出た候補者たちはハリス氏を見習って、積極的に中国語名を付ける傾向がある。

蘇栄麗さんによると、父がハリス氏に中国名を付けた後、当時、公共弁護士長に立候補していた日系人のJeff Adachiさんにも中国名「賀大器」を付けたという。なぜ関係のまったくない2人の姓に対してともに「賀」と付けたのかという疑問に、「お祝い」の意味を持たせるためだと蘇錫芬さんは答えたそうだ。ちなみに、その2人はいずれも無事当選した。

■ハリス氏の対策に頭を抱えたトランプ氏の支持者

次のようなエピソードもある。

ハリス氏は賀錦麗という中国語の名前の意味を詳しく確認した後、「麗」があまり好みではなく、きれいな外見を強調するよりも、知恵で勝負するという意味の文字が望ましいと愚痴を言った。蘇栄麗さんは自分の名前にもこの「麗」が入っていることを持ち出していろいろと説明した。ようやくハリス氏は納得して、その中国名を名乗りだすようになった。いまや中国系有権者が多く住む団地などに行くと、ハリス氏は必ず「私は賀錦麗です」とその中国語名「賀錦麗」を皮切りに自己紹介を始めるのだ。

今回の米大統領選挙戦でトランプ氏側を支持する中国系住民はバイデン陣営に対する対抗策を考える際、ハリス氏の中国名対策に相当悩まされていた。「ハリスの中国名に惑わされるな」「人権問題などで中国を苦しめる人間だ」といったスローガンから、「情婦から議員への道」といったスキャンダル掘り下げ作戦までいろいろと対策が考案された。さらに、ハリス氏の当選で、米国の対アジア政策がさらにインド寄りのものに傾斜していき、対中国政策はさらに厳しいものになるだろうという分析も出ている。

バイデン氏の年齢のことを考えると、ハリス氏は米国歴史上初の女性次期副大統領だけではなく、将来、ひょっとしたら米国歴史上初の女性大統領になる可能性さえある。それも今回の米国大統領選への関心度を高めた理由の一つだ。賀錦麗という中国名はもっと頻繁に読者の視野に飛び込んでくると思う。賀錦麗、今のうちにしっかりとこの中国名を覚えておいてほしいものだ。

■筆者プロフィール:莫邦富

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。
知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させた。また日中企業やその製品、技術の海外進出・販売・ブランディング戦略、インバウンド事業に関して積極的にアドバイスを行っており、日中両国の経済交流や人的交流に精力的に取り組んでいる。
ダイヤモンド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」、日本経済新聞中文網にて「莫邦富的日本管窺」などのコラムを連載中。
シチズン時計株式会社顧問、西安市政府国際顧問などを務める。

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