<直言!日本と世界の未来>コロナウイルス禍の世界同時不況、「リーマン」超えも―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年3月15日(日) 6時30分

拡大

新型コロナウイルス問題は世界に広がり新たな局面を迎えたようだ。不安心理から株式相場は世界中で急落。人とモノの往来減少に伴う世界経済の減速懸念が拭えない状況が続いている。写真はNY株式市場。

新型コロナウイルス問題は世界に広がり新たな局面を迎えたようだ。不安心理から株式相場は世界中で急落し、NY市場ではダウ平均株価がわずか1カ月で「弱気相場入り」の目安となる2割を超す下落となり、先週1週間の下げ幅は2679ドルとなった。米政権が、英国を除く欧州からの外国人の入国禁止措置をとるなど、人とモノの往来減少に伴う世界経済の減速懸念が拭えない状況が続いている。13日の東京株式市場で日経平均株価は3年4カ月ぶりの安値となる1万7431円に沈んだ。

感染拡大に伴う企業業績の悪化懸念が背景にあるが、感染症という出口の見えない危機への不安を市場は反映している。感染拡大防止策として企業や個人がとる生産や消費など経済活動の自粛は実体経済を直撃している。感染症拡大を抑えながら経済の過度の落ち込みを防ぐ対策は待ったなしである。

もともと日本経済は景気後退局面にある。2019年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は年率換算で7.1%のマイナス成長だった。消費増税前の19年7~9月期も従来の年率換算0.5%増から、0.1%増に下方修正された。日本経済は、昨年10月の増税前から下降局面に入っていたことになる。そこに消費増税が直撃、さらに1~3月期に新型コロナウイルスが襲った。

日本経済への影響は、2012年の東日本大震災を上回り、2008年~2009年のリーマン・ショックをも凌駕する恐れもあるようだ。思い切った緊急経済対策が待たれるゆえんである。

リーマン・ショックに見舞われた2008年は年率換算マイナス3.4%、翌09年が2.2%のマイナスだった。両年を平均するとマイナス2.8%程度となる。現在のGDP550兆円の約3%とすると15兆円程度になる。したがってこの時の状況に照らすと、最低でも15兆円規模の緊急経済対策が必要だ。

GDPの4つの構成要素である「消費、投資、政府支出、輸出」のうち、米国や中国の経済が厳しい状態では輸出には頼れない。政府支出の公共事業はこれ以上の支出が難しいうえに、労働力不足を補う外国人労働者も入ってこない。民間の設備投資も消費が伸びないと怖くてできない。したがってGDPの6割を占める消費をいかに拡大するかが最大の課題となる。

政策金利がマイナスになり米国に比べ利下げ余地が少ない日銀も、政府と協調して景気下支えに動くべきだ。上場投資信託(ETF)や社債などの資産購入拡大、金融機関を通じた低利融資の拡充など、経済の血液とも言える金融が滞らないよう対策を早期に打ち出してほしい。

観光業や飲食業、航空業など需要激減にさらされる業界には、資金繰り支援だけでなく減税や直接補償なども検討すべきだ。学校の一斉休校に伴って働けなくなったり、需要急減で職を失ったりするなど、危機で生活が困難になる人々を直接支援する給付金なども有効だろう。

まず検討するべきは家計部門の減税だ。消費税減税と所得税減税の二つの方法がある。所得税減税については小渕内閣の際に約9兆円の定率減税を実施している。しかし、当時と比べると年金受給世帯が増え、勤労世帯が減っているので、所得税減税が家計に効きにくくなっている。低所得者層も増えており、所得のない人には恩恵がない。家計に効く減税はやはり消費税減税だと思う。たとえば2年に限定し、消費税率を5%にすると10兆円規模の減税になる。

新型コロナウイルスは燎原の火のように世界に広がっている。トランプ米大統領は感染拡大を受けて国家非常事態を宣言。最大500億ドル(約5兆4千億円)の連邦政府の資金を活用して、検査や治療の態勢を強化する。全米各地で新型コロナの感染者が急増しており、国を挙げて対応する姿勢を鮮明にした。人類共通の敵であるウイルス退治に世界各国が一丸となって邁進するよう切望したい。

<直言篇113>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携