実りつつある日中の科学技術交流―藤嶋昭(東京理科大学栄誉教授)

Record China    2019年5月31日(金) 14時0分

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東京理科大学の元学長である藤嶋昭栄誉教授は光触媒研究の権威として知られ、その光触媒技術はすでに医療の現場やガラスの曇り止めといった日常生活でひろく活用されているものである。

「物華天宝」という言葉は「人傑地霊」と続きます。よい天の恵みを得るためには、それに関係する人が大事です。私たち研究者は、未知なるもの、隠されていること(物)を研究し、その成果(華)を出すことが大事ですが、それには研究者(人傑)が大事なのです。それも1人だけではダメで、集まった全体のグループの雰囲気が大事です。

――中国の習近平国家主席は就任以来、「イノベーション」をたびたび提唱しています。習主席は今年の6月に来日する予定ですが、「イノベーション」を強調されている点について、どのように評価しますか。

藤嶋:一番大事なことです。今までなかったことを見つけ、それを世の中の役立つようにするということを、科学者はみんなやっていることですが、総括すると「イノベーション」という言葉になると思います。

中国の場合は資金が潤沢で、以前、中国から光触媒の研究センターを北京でつくってくださいと言われたことがあるのですが、「もう年ですから無理ですよ」と答えたら、「では、私(江雷)がやりましょう」と言って、彼がやってくれました。本当に積極的に中国は政府を上げてやっています。しかも、土地は全部国の所有ですから、政府がここにつくるといったらできてしまう(笑)。その辺は強いです。指導者が計画すると、さっとできてしまいます。

<江雷氏のクモの糸の研究>

――ノーベル賞受賞は、日本や中国にとって、どのような意味があると思いますか。

藤嶋:近年、日本は毎年のようにいただくようになってきて、これは非常に誇れることです。かつては湯川秀樹博士が1人とっただけで大ニュースになり、その後徐々に増えてきましたが、最近の受賞ラッシュは、今までの基礎力がようやく実ってきたのではないかなと思います。

そういう点では、中国も徐々に受賞なさっている方がいますが、私の予想では、江雷君がいずれ受賞すると思います。彼のアイデアは本当にすごいです。

彼の一番有名な論文は10年以上前のものですが、クモの巣について書かれたものです。真夏にクモの巣の表面の「ねばねば」が乾燥して硬くなる。すると、虫がとれなくなります。ところが同じものを次の日の朝見ていると、また「ねばねば」になって、虫をとっている。それがなぜかを解明しました。クモの糸というのは、すごくよくできていて、空気中の水分をうまく吸収しているのです。それを発見し、人工的にもつくってみせた。そして『Nature』の表紙の写真にもなりました。江雷君のやり方は、常に「生物に学ぶ」こと、生物の不思議をモチーフに、それを解明していくというものです。

彼の研究が評価される日を、私自身楽しみにしています。(提供/『人民日報海外版日本月刊』)

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