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<直言!日本と世界の未来>「一帯一路」がとりもつ“深い縁”=習近平主席の欧州訪問に注目=―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2019年3月31日(日) 5時40分
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目まぐるしく動く激動の世界情勢にあって、中国とヨーロッパの急接近に注目せざるを得ない。習近平国家主席は3月下旬にヨーロッパ諸国を歴訪、イタリアでは「古代のシルクロードをよみがえらせ、各国の人民に利益をもたらしたい」と言い放った。習氏が2013年に提唱した巨大経済圏構想「海と陸のシルクロード(一帯一路)」は中国と欧州を結んだ古代の交易路がモデルで、マルコポーロの時代にイタリアはその発着点だった。

米中経済摩擦が長期化する中で、中国は欧州への接近を強めている。習氏は昨年末にもポルトガルとスペインを訪ねているが、今年初めての外遊先もイタリア、モナコ、フランスと欧州3国となった。

中国・イタリアの一帯一路に関する覚書では自由貿易や多国間主義の重要性を確認し、港湾を含むインフラ整備やエネルギー分野などの協力で合意。協力には通信技術分野も含まれ、米中が対立する次世代通信システム「5G」の主導権争いで、中国を利することになりそうだ。米国は華為技術(ファーウェイ)製品の排除を欧州各国に要求しているが、ファーウェイは2000年から欧州で事業展開し、携帯端末や通信設備が浸透している。英国の情報当局はファーウェイの5G 参入について「リスクは管理可能」と分析。ドイツも5G周波数の入札に「特定企業を排除しない」方針を示している。

フランス公式訪問では保護貿易反対や気候変動対策などで連携を確認。中国が欧州航空機大手のエアバス300機を購入する大盤振る舞いを演出し、マクロン大統領から一帯一路に「注目し、重視する」との言質を引き出した。

マクロン大統領は習主席の訪仏に合わせ、異例にもドイツのメルケル首相、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長を招きパリで4者会談を行った。米国第一主義を掲げるトランプ政権と各分野で溝が深まっている現状を踏まえ、欧州全体として中国と協調していく姿勢を内外に示した格好である。仏大統領府で行われた会談の冒頭、欧州3首脳が習氏をにこやかに出迎えた光景は象徴的だと思う。習氏は、中国とEUの関係強化のために「不信」を乗り越える必要性を説き、4首脳は地球温暖化対策や貿易・投資などにおける多国間主義の重要性を確認した。

トランプ政権のアメリカ・ファースト主義に対抗して、欧州諸国と中国の多国間経済協力が議論されたことになる。欧州諸国にとっては、中国マネーの導入で経済発展と雇用増を期待したいところである。市場は「政経分離」であり、中国マネーの受け入れによって企業業績が改善すれば欧州株の「反発」が期待できるという。

特に「EU離脱」に揺れる英国は対中接近が目立ち、中国製原発の導入が計画されている。南欧諸国では、厳しい構造改革実行という条件つきの国際通貨基金(IMF)援助よりは、当座は「物言わぬ」中国の出資のほうが好ましいと考えているようだ。トランプ政権が地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」など多国間の枠組みに背を向けていることも、中国の存在感を高める結果につながっている。

世界は激動し、大きな「地殻変動」が起きている。目を凝らして事態の推移を見ていきたい。
<直言篇85>

■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。
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