<直言!日本と世界の未来>世界経済「ブロック化」の再来を危惧―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2019年3月24日(日) 6時0分
世界経済「ブロック化」の再来を危惧―立石信雄オムロン元会長
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トランプ大統領による「米国ファースト」をきっかけに保護主義が世界中で蔓延。米中の次代の覇権争いを巡る攻防も世界経済の低迷に拍車をかけている。特に危惧されるのは「世界経済のブロック化」ではないだろうか。
トランプ大統領による「米国ファースト」をきっかけに保護主義が世界中で蔓延。米中の次代の覇権争いを巡る攻防も世界経済の低迷に拍車をかけている。特に危惧されるのは「世界経済のブロック化」ではないだろうか。

ブロック化の危険性は歴史が証明している。1929年に米国に端を発した世界大恐慌を受けて米国が30年代に実施した貿易戦争により、全世界の貿易は66%萎縮。米国が関税率を引き上げ他の国も対抗、全世界の貿易コストが10%上昇した。さらに主要国は相次いで「ブロック経済」政策を採用。英国によるポンド圏、フランスによるフラン圏、さらに米国のドルブロック圏などの、貿易の「囲い込み」現象が出現した。世界経済がブロックに分割されたことにより、ドイツやイタリア、日本など植民地を持たないか少ない国は不況の影響をより深刻に受けることになった。その結果、イタリアやドイツではファシスト、ナチス、日本では軍部など、「世界秩序の変更」を求める勢力が台頭し、第2次世界大戦の大きな原因になったと言われる。

戦後の自由貿易体制の構築は、「ブロック経済への反省」の結果実現したものだ。ブロック化が進行すれば、特に資源が乏しく貿易投資立国の日本は大きな影響を受ける。筆者は世界経済が再びブロック化し、自由で開かれたグローバル経済システムが阻害されるのでは懸念している。

「世界経済のブロック化」を進行させかねない象徴的な事例が米国による、次世代通信規格「5G」の通信網構築に向けた中国・華為技術(ファーウェイ)製品の排除への圧力だと思う。同盟国に使用しないよう求め、日本を含む多くの国が応じている。これに対し中国は周辺国や途上国との関係改善を進めて米国をけん制する構え。ドイツはファーウェイ製品の排除を明示しない方針を決め、英国も慎重姿勢。イタリアは中国と「一帯一路」覚書に調印、経済苦境にあえぐ中欧・東欧諸国も親中政策に傾いている。欧州はトランプ米政権と一定の距離があるため、中国にとっては切り崩しの対象のようだ。

さらに米国は中国などが加盟する国際自由貿易協定に同盟国が参加を抑制する動きも見せている。「米国を取るか中国を取るか」と選択を迫るトランプ政権の手法は世界をブロック経済に分断する懸念がある。

米中の覇権争いが続けば、相互依存が進んだグローバル経済を分断し、世界全体を経済危機に巻き込む恐れがある。米ソ冷戦は欧州の核危機など軍事的緊張をもたらしたが、世界経済への影響は限定的だった。世界1、2位の経済大国が安全保障もからむハイテク覇権を争う新冷戦は、世界経済を直撃、冷戦終結によるグローバル経済化で網羅されたサプライチェーンなど、相互依存を寸断することになる。すでに世界全体の経済失速が憂慮されている。

こうした激動の世界情勢の中で、貿易立国・日本の役割は重要である。最大の同盟国である米国と最大の貿易相手国である中国の間で橋渡し役を担うべきである。日本がめざすべきはアジア太平洋融合の枠組みだ。環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を結合して「スーパーFTA(自由貿易協定)」をつくり、米国を呼び込むことである。分断ではなく融合こそ共通目標である。6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議は、議長国である日本にとって活躍のチャンスだと考える。新冷戦やブロック化を抑止し、世界経済の再興に向け先頭に立つ重要な機会になろう。
<直言篇84>

■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。
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