中国・全人代でハプニング、省政府幹部の発言を共産党トップが封じる

Record China    2019年3月10日(日) 10時0分

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中国で行われている全人代で異例のハプニングが起こった。海南省政府発展改革委員会の符宣朝主任が中央政府に財政支援の強化を求めたところ、共産党同省委員会の劉賜貴書記が発言をさえぎった。写真は全人代が開催される人民大会堂の大会議場である万人礼堂。

中国で20日まで開催される全国人民代表大会で異例のハプニングが起こった。海南省発展改革委員会の符宣朝主任が、産業構造の改革に注力する同省が、中央政府に財政支援の強化を求めたところ、共産党同省委員会の劉賜貴書記が符主任の発言をさえぎって「自らの力で立ち上がらねばならない」などと述べた。中国青年報が2019年3月8日付で報じた。

全人代では、全体会議だけでなく、関係者だけが出席する「分科会」も数多く開催される。8日には海南省の予算審査報告会議が開催された。海南省側には省政府や同省共産党委員会幹部も多く出席したが、いずれも省選出の代表(全人代議員)の資格で出席した。それ以外に、中央政府の関係者も出席した。

海南省では、経済の不動産業に対する依存度が高すぎるとして、産業構造の改革に力が入れられている。17年には不動産開発投資の省内総生産(GDP)に占める割合は44%に達したが、18年1-9月には34%にまで引き下げるなどの効果が出たという。

符主任は、現在も省幹部には深刻な「不動産依存症」が残っていると説明。政府あるいは共産党幹部が不動産関係業者と会う際に、人目に触れぬよう自らの事務室内で相談をするなどの現象があるという。

符主任はさらに、産業構造の転換のために海南省の地方政府は財政が逼迫(ひっぱく)していると指摘。例として同省三亜市を挙げ、18年末に同市の債務残高は約220億元(約3640億円)もあり、市長も「強い圧力を感じるのは事実」と述べたと説明した。

符主任は18年には中央政府が海南省に対して約100億元(1650億円)の財政支援を行ったことに触れ、同省が経済の不動産に対する過度な依存から脱却する鍵となる時期における財政支援は「雪中、炭を送る(相手が最も苦しい時に、助けの手を差し伸べるたとえ)」だったと表明。

ただし、符主任は中央政府の財政支援はまだ十分でないとして、会議に出席していた劉昆財政部長(財政相)に対して、「25年までに自由貿易港制度建設の初歩的段階を達成するという目的のために、財政支援を今年から年率10%の割合で増やしてもらえないだろうか」と述べた。

符主任は続けて、財政支援の増額は海南省が進める作業を激励し肯定する意味を持つなどと説明しかけたが、共産党同省委員会の劉賜貴書記が突然、符主任の発言に割って入って「もらうカネは少なくする。人(中央政府)のサイフの中のカネも多くはない。多くの政策を行って、自らの力で立ち上がり、自らカネを集めるべきだ」と述べた。

符主任は発言を再開したが、中央政府の財政支援の話題には触れず、省内の観光開発についての意見を披露したという。

会議終了後、劉昆財政部長は、海南省の議員による意見や提案については財政部に持ち帰って検討し、「われわれは議員の意見を反映するために最大限の努力をする」と述べた。

中国の地方政府は所管地域の行政を執行する役目を持ち、日本の地方自治体に近い組織だ。一方で、中国共産党は各地に「委員会」という名称の支部を設置している。共産党の地方「委員会」は、所管地域の行政、立法、司法などすべてを指導する立場だ。海南省でも、共産党委員会トップの劉賜貴書記は、事実上の「省トップ」であり、同省政府・発展改革委員会の符宣朝主任よりもはるかに上の立場ということになる。(翻訳・編集/如月隼人

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