<コラム>ニュース中国語事始め=「チョー危なかった」話…中国で用いられる単位について

如月隼人    2019年1月25日(金) 23時40分

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私がまだ駆け出しも駆け出しの時ですが、<1兆瓦 yi1 zhao4wa3>といった中国語に出くわしました。「1ワットの1兆倍」かなと思ったのですが、なんかいやな予感がした。そこで、辞書を引いてみた。いや、驚きました。無知とは恐ろしいものです。資料写真。

さて、産業関連の記事には、電力の単位である<瓦 wa3>(ワット)がよく出てきます。「キロワット」は<千瓦 qian1wa3>です。「キロ」の語源はギリシャ語で1000を意味する「キリオイ」だそうですから、<千瓦>と意訳して中国語での単位としたわけです。例えば、中国語で<5千瓦>とされていたら「5キロワット」と訳さねばなりません。もっとも、「5000ワット」としても間違いではありませんが。

私がまだ駆け出しも駆け出しの時ですが、<1兆瓦 yi1 zhao4 wa3>といった中国語に出くわしました。「1ワットの1兆倍」かなと思ったのですが、なんかいやな予感がした。そこで、辞書を引いてみた。いや、驚きましたね。<1兆瓦>は「1ワットの1兆倍」ではなかった。「1メガワット」、つまり1ワットの100万倍でした。それこそ、「ケタ違い」です。思わず「チョー危なかった」という文句が脳裏を横切りました。無知とは恐ろしいものです。

日本語で「1兆」と言えば1億の1万倍ですよね。1の後に0が12個続く数字です。ところが、現代中国語では数字として「兆」という言い方をほとんどしないのです。例えば「5兆円」だったら<5万億日元 wu3 wan4yi4 ri4yuan2>のように表現します。<兆>という文字から具体的な数字としての感覚が薄れてしまった一方で、「大きな数を表す」というイメージは残っているので<兆瓦>という言い方にも抵抗がなかったのでしょうか。ちなみに台湾では<百万瓦>という言い方をします。「1メガワット」は中国大陸部では<1兆瓦>、台湾では<1百万瓦>です。

なお、電力量としてよく使われる「キロワット時」は正式には<千瓦・時 qian1wa3shi2>または<千瓦小時 qian1wa3xiao3shi2>ですが、ニュース記事を含めて一般的には<度 du4>と呼ばれています。電気や電力を扱う記事に<5度>という表現があったら「5キロワット時」を意味します。

<兆>が「メガ」の意で使われるのは電力関係だけではありません。核兵器の威力を示す「メガトン」は<兆噸TNT zhao4dun1 TNT>です。「メガトン」とは、高性能火薬であるTNTの量に換算して爆発力を示す単位です。日本では単に「メガトン」などと言う場合もありますが、中国語では<兆噸TNT>と、<TNT>をつけて表現するのが一般的です。

それから、情報量の単位の「バイト」は中国語で<字節 zi4jie2>ですが、「キロバイト」なら<千字節 qian1zi4jie2>、「メガバイト」なら<兆字節 zhao4zi4jie2>です。<兆(メガ)>以上に大きい単位の場合、音訳が使われます。例えば、<3太拉字節 san1 tai4la1 ji2zi4jie2>(3テラバイト)のようにです。小さい単位にも音訳が多く使われます。例をいくつかをご紹介いたしましょう。

大きい単位を表すのに使う言葉

<吉>または<吉[口加] ji2ka1>…ギガ(10の9乗)

<太>または<太拉 tai4la1>…テラ(10の12乗、台湾ではこの「テラ」に<兆>を使う)

<拍>または<拍它 pai1ta1>…ペタ(10の15乗)

小きい単位を表すのに使う言葉

<微 wei1>…マイクロ(10の6乗分の1)

<納>または<納諾 na4nuo4>…ナノ(10の9乗分の1)

<皮>または<皮可 pi2ke3>…ピコ(10の12乗分の1)

ピンインの表記について:本コラムでは中国語を<>の中に、日本語の常用漢字の字体で表示しています。以下の部分のピンインについては、ローマ字表記の直後に声調を算用数字で添えます。軽声は0とします。 u の上に2つの点を添えるピンインには v を用います(例:東西=dong1xi0、婦女=fu4nv3)。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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