<在日中国人のブログ>中国人に最も影響を与えた3人の作家、魯迅が「黒」なら毛沢東は「赤」、そして金庸は…

雪田    2018年11月10日(土) 19時20分

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10月30日、香港の著名作家・金庸先生(写真)が亡くなった。金庸ファンである筆者は自宅の本棚にある金庸先生の小説を眺め、昼夜問わず金庸小説に夢中になった昔の自分を思い出し、懐かしい気持ちと金庸先生への哀悼の意で胸がいっぱいになりました。

金庸は前述の2人より純粋な文学者であり、教科書における地位も政治的影響力もなく、武侠小説によって中国人の心をつかみました。金庸小説を原作としたドラマは次々とヒットするため、違う時期で新しく撮り直したり、同じ作品の香港バージョン、台湾バージョン、大陸バージョンを撮ったりと、ファンを魅了しています。ドラマの人気で金庸作品は愛読者をさらに広げました。

金庸は新聞社も経営していましたが、彼の新聞は香港を拠点として発行し、本土ではあまり影響力がありません。金庸の歴史の知識は豊富で、新聞社で社説を書き続けることによって鋭い観察力と巧みな言葉使いが磨かれました。金庸の武侠小説は他の同類小説より断然深みとスケールがあり、アクション時代劇+伝奇江湖(江湖は武術者の世界)を展開していました。

金庸小説は「大人の童話」とも言われ、老若男女が楽しめますが、大人は歴史の背景や人物の個性などからさまざまな連想ができ、無限の想像力を呼び起こすことができます。

金庸作品は、1970年代後半から1980年代前半にかけ海賊版が本土で出回り、徐々に人気が広がりました。トウ小平も金庸作品を愛読したと言われており、トウ小平が金庸と会った後に、金庸の作品は本土で正式に出版されました(金庸の父親は1950年に新政府によって処刑されたが、トウ小平と会った後、父親が冤罪という結論も出されました)。

金庸の作品が中国本土に入ったころは、10年間続いた文化大革命が中国を文化の砂漠にした時期でした。トウ小平が揚げた「改革開放」の政策によって、香港や台湾、アメリカ、日本などからいろいろなものを入って来ていましたが、金庸作品の背景もルーツも本土にあり、共感を呼び長く人気が続いています。中国人がいるところに必ず金庸ファンがいると言われているほどです。特に人気が高い「天龍八部」、「射[周鳥]英雄伝」、「神[周鳥]侠侣」などは日本語にも訳され出版しています。

金庸作品の人物は多種多様で、正統派でも、悪党でも皆個性があり、生き生きとしています。例えば「天龍八部」の悪党、星宿派の家元「丁春秋」は、登場するたびに弟子たちから吐き気をもよおすほどにもてはやされ、「神通広大、法力果てしなく、星宿老仙」など、讃える声が響きます。この描写は、本土の文化大革命の指導者を讃えるブームからインスピレーションを得たと言います。

金庸作品の「侠」の精神による「家国」の思いは、筆者も含む多くの人に深く影響を与えています。アリババの創業者ジャック・マー氏など、中国のIT業界は金庸好きな人が多いです。

魯迅の「批判的な」意識を黒とするなら、毛沢東の「闘争的な」意識は赤です。そして、金庸は武侠小説の形で中国人に「侠」、「仁」、「義」、「家国」の思いなど、違う色を与え、現代中国人の下地に一抹の虹色を塗りました。金庸先生に感謝します!

■筆者プロフィール:雪田

中国北京市生まれ、名古屋在住。北京航空航天大学卒、宇宙開発の研究院で修士号を取得。1990年代に来日し、IT業会社に勤務。現在は語学塾を経営する傍ら、市民グループなどで中国関係の講座をしたり、フリーライターとして日本のことを中国の雑誌などで紹介している。

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