<コラム>マカオのカジノのゆくえと日本版IRへの懸念

澤野勝治    2018年9月7日(金) 23時40分

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日本ではカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が紆余曲折を経て先日成立した。一方のカジノの本場、マカオでは夏休みを通し相も変わらず大勢の観光客が押し寄せていた。写真はマカオ。

大型複合施設であるB社のそれは、それまでの3つのホテルに加え、この離婚劇の直前にもう1つのホテル、故ザハ氏の遺作とも言えるホテルが竣工。ところがC社の撤退で、3つのホテルのうち2つのホテルのオーナー(またはパートナー)が撤退。そこへザハ・ホテルの開業だ。つまり4つに増えたホテルはそのひとつを除き、同じ敷地内で大家さんが異なるホテルを3つも経営すると言う事態に陥っている。

そこで打ち出したのがマネージャークラス(日本で言うと部長職くらい)の昇給停止など、財政の緊急措置が取られ、さらには税金免除の申請も出された。日本企業に当てはめて言うと、財務面の緊急措置がとられた訳だ。

ところが日本にこのB社の社長が行くと「マカオからカジノ王が来た!」とマスコミもこぞって持ち上げるので一体どうなっているのやら?と、思わずにいられない。

両家ともお金持ちの息子と娘。互いに相手の家にカネがあると思って征略結婚させてみたらどっちもカネが無かったなんて笑えない話を何度か見聞きしたが、このあたりキチンと情報整理していかないと後でドエライ事になる。

簡単に考えれば日本企業にとって、B社は買い時でありB社を買ってから日本のIRに入るのが一番てっとり早い道なのだと思う。しかしここマカオで成功した日本企業は本当に少ない。むしろ大手がこぞってコケている。「どう考えてもこうはならないだろ?」と言うリザルトしか残っておらず、それ故、IR法上げ潮の現在でも、日本の関係企業は若干引き気味の動きしか出来ていないのは見て取れる。

日本の報道を見ると、IR法を実行するとなぜか「日本側が莫大な税金を投入」みたいな記事を見かけ、「何を言っているんだ?」と言う気持ちになる。

先日、仕事で日本のIRに関わるであろう建設や電気・ガス等のインフラ業者、約50社をマカオのIR企業(米国系)が招待をして「IRとは何か?」と言うプレゼンをやった。

IRが始まれば日本に対して莫大な投資が始まり、これらの業者は大きく潤うであろう。当然、経済の基本でそこに従事する従業員、家族へとカネは流れ、日本の経済にとってマイナスには絶対にならないであろうし、これら業者は自ら身銭を切って投資をするものでもない。そう言う観点から日本にとってプラスか?マイナスか?で問えば、確実にプラスであろう。

しかしその周辺の「法整備」これは当然、これからと思われるが現状で聞こえてくる情報はお粗末な話しか聞こえてこない。入場料しかり、税金しかりだ。

カジノはその存在する場所が「オフショア的経済地域」と見なさないとやっていけない側面を持ち合わせている。日本の金融庁がマカオに来て日本の法律を適用したらマカオのカジノはその日のうちに全滅するだろう。どっちが良い、どっちが悪い、のでは無く、そもそもの法の成り立ちが違うのだ。

そこをキチンと、なおかつ早急に整備しないと豊洲の二の舞で、始まる前に巨額の損失を出す事は間違いない。下手をするとどこぞの一国より金持ちとされる東京都だから喉元を過ぎて熱さを完全に忘れているが、あれが一般企業なら確実に破産の憂き目にあっていただろう。カジノビジネスのあり方とオフショアの存在意義が問われている時期だからこそ、自分の利益に誘導しないブレーンの人物の話に耳を傾けなければならない時期なのではなかろうか。

■筆者プロフィール:澤野勝治

1964年生まれ。1983年に音楽制作プロダクション、1994年制作プロダクションを設立。大手広告代理店の協力会社として中国モータースポーツに関わる。上海の台湾系レース会社で働いた後、マカオへ移住し結婚。レーシングサービス会社と一般ビジネスのサポート会社を設立。中国をはじめとするアジア圏での日系自動車メーカーのリサーチや日本車の現地適合テスト等も請負う。中華圏で最初のF1チーム・セオドールレーシング(1977-1983年)のセカンドジェネレーションチームを2013年に立ち上げ現在に至る。現在は新世代ゲームのプロジェクトに参画し、マカオ・台湾・日本での共同プロジェクトのオーガナイズをメーンに各種コンサルティング業務を展開している。

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