<直言!日本と世界の未来>企業は人なり、「多様な人材を活かす戦略」が重要―立石信雄オムロン元会長 

立石信雄    2018年4月1日(日) 5時0分

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人は本来、多様であり、また変化に対応できる存在である。人材の活用についても、このことに立ち戻り、多様な属性、価値観、発想を取り入れていくという「ダイバーシティ・マネジメント」が重要である。

人は本来、多様であり、また変化に対応できる存在である。人材の活用についても、このことに立ち戻り、多様な属性、価値観、発想を取り入れていくという「ダイバーシティ・マネジメント」が重要である。

日本経団連では、ダイバーシティ・マネジメントを「多様な人材を活かす戦略」と定義している。つまり、従来の企業内や社会におけるスタンダードにとらわれず、多様な属性(性別、年齢、国籍など)、価値観、発想を取り入れることで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と個人の幸せの双方につなげようとする戦略である。

ダイバーシティの本質は、異質・多様性を受け入れ、違いを認め合うことである。それによって、企業にとっては優秀な人材の確保、変動するマーケットへの対応力強化、グローバル化への対応、他社との差別化を図ることができる。また個人にとっては、自らの属性や価他観によって働き方、ひいては生き方を選択し、決定できる。

さまざまな価値観を共有するには、異なる価値観、発想、能力を持つ多様な属性の人材が企業内に存在していることが望ましい。多様な人材を活かし、個人の持つ能力を最大限に発揮させるには、それまで企業内で大多数であった属性に有利だった働き方や、それを支える人事システムの見直しが必要になる。

◆多様な人材活用が企業の成長・発展につながる

日本企業が多様な人材を活用することは、社会的責任からやむを得ないという消極的な意義からではない。日本企業を取り巻く環境変化を考えると、むしろ積極的に多様な人材の活用を考えることは、企業の成長・発展につながる。多様な価値観を持った人たちがぶつかることによって、新しい価値が生まれるのである。

かつての日本企業は、高度経済成長時代を中心に、すべての社員を一律のものとしてとらえる傾向があった。それは当時の企業環境や社会情勢への対応としては、最適だったと言うことができるのかもしれない。しかしながら、バブル崩壊と長期の景気低迷で日本企業が構造改革にあえいでいた中で、そうした一律的な社貝の捉え方が方向転換され始めた。

労働条件という側面から言えば、これまでのように入社してから定年までどのような仕事をするかも含めて、会社が礼員を丸抱えするような終身雇川的な形態ではなく、社員個々人の生涯設計を尊重し、やりたい仕事ができるような仕組みをつくっていくこと、また、人材育成においては、会社がその会社独自のやり方を教え込むというのではなく、あくまで個人が主体的に自己の能力開発に取り組み、会社はそれを支援するということが重要である。つまり、その人がひとつの会社内での仕事だけでなく、どこへ行っても通用する能力、いわゆるエンプロイヤビリティを身につけるための環境整備が必要になるということが、指摘されて久しい。

少なくとも従来のように、社員にロイヤルティ(忠誠)を求めて、塩漬けにしておくような時代ではない。働く側も価値観が多様化し、いろいろな働き方が出てくるし、実際に出てきている。そうした中、それぞれが持つ専門性や能力を引き出していくことが、企業にとっても重要となる。

◆産業構造・環境の大きな変化に対応を

日本経団連では、多様な雇用形態を最適に組み合わせ、環境変化への柔軟な対処と企業の競争力強化をはかるための方策として、「雇用ポートフォリオ」という考え方を提唱してきた。この考え方においては、社員は「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の三つに大別され、その期待される役割も異なるとしている。

たとえば、長期蓄積能力活用型人材の場合は、経営あるいはマネジメントの中枢を担う人材としてMBA(経営学修士)相当の教育訓練を施していくといった仕組みが必要である。また、高度専門能力活用型人材、いわゆるスペシャリストについては、従来は技術職を中心に専門性を極めたい人も、社内で昇格するにしたがって管理業務に追われるようになり、あるいは管理業務をやらないと評価されないという傾向があった。これに対し、専門能力をもっと評価し育てる制度が必要だろう。

人材活用という観点で第一に重視しなくてはならない環境の変化は、少子高齢化の進展である。日本は近い将来、労働力不足社会になることが確実視されている。従来のような壮年男性の労働力のみに依存するだけでは、企業の生産性は低下し、成長は期待できなくなってしまう。

第二の環境変化は経済のソフト化である。今や、無形資産が付加価値を生む時代である。企業のもつ無形資産としては、ブランド、知的財産、技術・商品開発力、情報システム、ビジネスモデルなどがあげられる。また、企業組織からつくり出される無形資産、知(ナレッジ)として、組織構造自体や業務プロセス、顧客とのネッワーク、個人およびグループの持つスキル・ノウハウ、教育システムなどもあげることができる。

こうした無形資産をつくり上げるのがまさに人材であり、多様かつ柔軟な発想のできる優秀な人材を企業がいかに多く確保できるかによって、その企業の存立自体が決まるといっても過言ではない。

今、産業界では大変大きな産業構造の変化が起こっている。今までは鉄鋼とか、自動車、電機、化学、食品といったように、物理的につくり出すモノの種類によって、さまざまな業種に分かれていた。しかし、現在変わりつつある新しい産業というものは、物理的な意味での分類から、対象とする市場、つまりマーケットにいかに貢献できるかという切り囗で産業の分類が進みつつある。たとえば、シルバー産業、ヘルスケア産業、環境産業(エコビジネス)、快適空間創造産業、リサイクル産業、癒し産業といった従来とは全く異なった産業の型が生まれてきている。このような新しい産業の型あるいはタイプが形成されていく中で起こっているのは、異業種問の融合であり、ハードとソフトの融合である。そこで必要なのが、まさに従来の殼にとらわれない“多様な人材”というわけだ。

多様な人材を活川していくために、企業は能力主義を前提として、従業員が持つ価値観やニーズに合った働き方を選択することができるよう、多様な働き方の選択肢を用意することが求められる。そして、従業貝の能力発揮を促しながら公正な評価を行ない、経営効率の向上やコスト削減を図っていく。それが、ダイバーシティを積極的に意識したでマネジメントの姿ということになる。

これからの日本企業は、高齢者、女性、障害者、外国人など多様な人材を戦力として活用していくとともに、その働き方においても多様性を受け入れることが求められる。

<直言篇45>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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