広東語を使わない広州市の若年層、政策と経済が伝統的な言語文化を直撃―香港メディア

配信日時:2018年3月14日(水) 23時10分
広東語を使わない広州市の若年層、政策と経済が言語文化を直撃
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香港の英字メディア、サウスチャイナ・モーニング・ポストは12日、広州市をはじめとする広東省の都市部で、子どもや10歳代の若者が広東語を使わない現象が目立つと報じた。写真は深セン。
香港の英字メディア、サウスチャイナ・モーニング・ポストは12日、広州市をはじめとする広東省の都市部で、子どもや10歳代の若者が広東語を使わない現象が目立つと報じた。中国政府が標準語である普通話の普及を強く進めていることと、経済における「力の逆転」が影響しているという。13日には中国メディアもこの話題を紹介した。

記事は、広州市では高齢者が孫に対して慣れない普通話で話す光景が日常的に見られると指摘。親が子に話す場合も普通話を使うとした。同様の現象は深センや東莞など、広東省内の他の都市でも見られるという。

中国語は、地方による方言差が大きいことで知られる。漢字で書けば意思疎通は可能だが、例えば広東省出身者と北京の出身者がそれぞれの地元の言葉を使って会話しようとしても、意思疎通はほぼ不可能だ。その差は、例えばスペイン語とポルトガル語の違いより大きい。そのため、言語学の専門家から「中国語全体を一つの言語と見なすのは無理がある」との意見も出されるほどだ。

一方、中国当局は国民全体の会話を可能とする標準語の浸透を強く意識している。標準中国語は「普通話」と呼ばれる。「あまねく通じることば」の意だ。普通話の土台は、清朝時代に中央宮廷の官僚らが話した「北京官話」だ。科挙に合格して全国から集まった官僚は、それぞれの出身地の言葉で会話することができなかった。そのため、北京の言葉を元に「北京官話」が成立した。中華民国も「北京官話」を基礎に「国語」を定めた。中華人民共和国も「国語」をほぼ踏襲して「普通話」とした。

中国の他の地方と同様に、広東省でも長期にわたり「普通話」が奨励されてきた。学校教育の場でもそうだ。サウスチャイナ・モーニング・ポストは広州市在住で、小学校に通う息子を持つ40歳女性の話として「今の子どもは多くの場合、自分がここで生まれ育ったにもかかわらず、広東語を話すことを嫌う」と紹介した。

学校で広東語という「方言」を使うことが奨励されないため、地方における「文化的遺産」である広東語は、人々の意思疎通の場で主導権を失いつつあるという。

記事は続けて、2017年には地元の広東語話者にとって力強い動きもあったと紹介。広州市の五羊小学校が広東語の教材を作成したという。広東語のローマ字表記や文法、さらに歴史や起源も紹介する内容で、当初は市内の他の小学校にも広めていく計画だった。

しかし地元当局の圧力で、計画は中止となった。計画関係者は中止の状況などについて「それ以上の説明を拒否した」という。なお、中国メディアは「計画の中止と関係者の説明拒否」の部分は割愛して報じた。

記事は続けて、中国全国における普通話の話者は70%程度であり、中国政府は2020年までに、これを80%に引き上げようとしていると紹介。司法当局の関係者は、中央政府の方針には逆らえない状況という。

記事はさらに、広東省の若年層で進行する「広東語離れ」について、経済状況の変化があると指摘した。中国が改革開放政策を導入した1970年代末から、広東省には香港や海外華僑による投資や企業進出が集中した。香港人や多くの海外華僑が使うのは広東語で、広東省では広東語の重要性が高まった。

工場の設立が相次いだことで、省外から多くの労働者が広東省に来ることになった。彼らは仕事における必要もあり、広東語を熱心に学んだ。また、香港映画などの娯楽作品が広東語を使っていたこともあり、広東語に対する評価はさら高まった。

2000年代までは広東省の都市部の若者は広東語を「ファッショナブルな言語」と受け止めていたという。10年には省内の主要テレビ局が広東語番組の枠を縮小したことで、街頭での抗議活動も発生した。

しかしその後、深セン市の大発展などで、香港に対するイメージは相対的に低下した。そのため、広東省における広東語への「リスペクト」は過去のものになってしまったという。

香港においても広東語の地位は低下している。記事によると、「家庭で通常は広東語を使う」香港住民は06年調査の90.9%から、17年には88.9%に低下した。

香港では学校における普通話の使用も推進されている。そのため、一定の教育を受けた若者のほとんどは、母語としてではなくとも普通話を使えると言ってよい。香港における言語シーンでも、普通話は重要性を増しつつある。

なお、台湾では古くから、福建省方言に近いホーロー語(台湾語)や客家(はっか)語が使われてきた。しかし戦後になり台湾を支配した国民党政権は、中華民国の標準語である「国語」の使用を強制した。現在ではホーロー語や客家語の地位が見直されているが、標準語としては現在も「国語」が用いられている。中国の普通話と台湾の「国語」はほぼ同じで、意思疎通に問題はほとんどない。

かつては台湾人と香港人が会話をする場合には英語を使うしかないなどで、意思疎通に一定の障壁があった。しかし現在は香港人の多くが普通話を使えるようになった。そのため、中国政府に反対する立場で活動する香港と台湾の若者が連携する場合にも、双方が普通話と国語でスムーズに会話ができるようになるなど、中国政府にとっては皮肉な状況が発生している。(翻訳・編集/如月隼人
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