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「他人は他人、自分は自分」と割り切る現代の若者らしさが溢れる李然の作品。若者の欲望、願望、また困惑や不安などを表出した内心の告白は、まるで他人の視線など意識しない自分本位さを貫いているようで、ポップな色彩の中に毒々しさを放っている。
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90年代中後期、インターネットという媒体が我々の生活に入りこんで、世界は激変した。しかし、中国という国の激変ぶりは先進国各国が経験したそれとは比較にならないほど大きかった。世界の情報が流入し、それまでの伝統的観念やモラルは遠くに押しやられ、ライフスタイルも一変し、何よりも、個人個人がそれぞれの価値観や思想を持つようになった。いわば、観念上の格差社会ができあがりつつあるのである。
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そんな激変のまっさなかに多感な思春期を過ごした画家・ 李然(リー・ラン)。わずか25歳ながら、オリジナリティーに富んだ作風で将来が期待されるアーティストである。グリッド状に描かれた人物が展開するシュールな妄想世界は、まさしく李然個人の脳内妄想をそのまま表出したようで、「他人は他人、自分は自分」と割り切る現代の若者らしさが溢れ、前出の「思想格差社会」を体現するようである。
若者の欲望、願望、また困惑や不安などを表出した内心の告白は、まるで他人の視線など意識しない自分本位さを貫いているようで、ポップな色彩の中に毒々しさを放っている。(文/山上仁奈)
●李然(リー・ラン)
1984年生まれ。中国の若手アーティスト。大学で美術を学んだ後、現在は天津美術学院附属中学で教鞭を執るかたわら、アーティスト活動を展開している。代表作に「魔塊」「体外排出」「性 アイスクリーム 宇宙船」など。
写真提供:匯泰国際文化発展有限公司(中国・天津)
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