「キャップはパチンと音がするまでしっかり閉めて下さい」、僕が初めて覚えた日本語―中国人学生

日本僑報社    2018年1月7日(日) 13時0分

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華南理工大学の莫泊因さんは、両国の交流の重要性を自身の体験を交え、作文につづっている。資料写真。

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一口に交流と言っても、その方法はさまざま。最近では日本のアニメが好きな中国の若者も多いが、彼らでさえ現代の日本社会についてよく知らないのが実情。その逆もまたしかりだ。華南理工大学の莫泊因さんは、両国の交流の重要性を自身の体験を交え、作文に次のようにつづっている。

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「キャップはパチンと音がするまでしっかり閉めて下さい」。これは私が初めて覚えた日本語だ。「こんにちは」ではなく、三菱の水性ペンのキャップに書いてあったその文だ。日本語が全く分からなかった私には、漢字と仮名を混ぜたその文に興味をそそられ、その意味を調べたり、何度も書いてみたりした。それがいわば日本語との出合いが始まったころだ。

今になって思えば、その出合いは日中の緊密な経済交流のおかげだ。愛用者が多いため、パイロットや三菱鉛筆の文房具が常に中国の書店の一角を閉めている。文房具のみならず、ニュース放送ための撮影機材、中国全土で走っている日本車、人気を博したラーメンと寿司……このように、日本製品が中国人の日常生活に浸透し、欠かせない存在になっている。

しかし、もし中日戦争が再び勃発し、両国の関係が氷点まで冷え込むと、日本製品の文房具まで売り場から姿を消し、日本料理店も閉店することが余儀なくされるのだろう。日本と関わっているものはすべて中国人の日常生活から排除され、経済のつながりが切られてしまうことも予想される。

だが、ただ一つ、切っても切れないつながりが残っている。それは文化だ。前日、日本への郵便の送り状を郵便局員に見せた時、「日本の地名には漢字が多いな。日本人は中国のいいところをパクっているんだね」と言われた。確かに、中国から伝来した日本語の骨格を務めている漢字が欠落すると、日本語は成り立たないのだろう。また、漢字だけではなく、仮名も、中国の草書から派生したものだ。日本語の源流が中国語にまで遡ることができると言えよう。

もし、日本が中国のいいところをパクっているといったら、中国も同じく日本のいいところをパクっていることになる。現代中国語の中に、日本から逆輸入された言葉が多く見られる。よく知られている「物理」や「哲学」のほか、「経済」や「時間」なども中国語で使用頻度が高い言葉だが、実はそれは和製漢語だったという。

中国語の不可欠な一部となっているこれらの和製漢語は、パクリより中日両国の途絶えることのない文化交流の証であると言えよう。たとえ戦争を引き起こされたとしても、日本が漢字を廃棄し、中国が「時間」や「文明」といった和製漢語を辞書から抹消することはしないのだろう。中日両国の文化のつながりは、想像以上に強靭なものだ。

この数十年、アニメ、ゲームやドラマは次第に漢字や漢語の役を受け継ぎ、新たな文化のつながりとなっている。ウルトラマンに熱狂していた小学時代の私にとって、日本はしばしば怪獣や宇宙人に襲われていた国であり、それを恐れずに戦う科学特捜隊の勇士の故郷でもある。中学に入ってから、私は『太閤立志伝』というゲームを通じて、織田信長や豊臣秀吉を知り、日本が風雲児の輩出する国だと思うようになった。

このように、日本への理解が徐々に深まってきて、真の日本像が浮き彫りになってきたのだ。しかし、それはまだ不十分だ。アマゾンで中国文学のベストセラーを調べてみたら、出てきたのが『西遊記』や『三国志』のような古臭いものばかりで、現代中国文学の傑作の邦訳がいっこうに見つからない。また、日本で中国社会の現状を描いた作品は稀であり、中国への理解を深めるのは難航していると言ってよい。

中国マネーが日本に進出しているのに対し、中国の文化は日本まで伝わっていない。文化交流というのは、一方通行ではない。中国への理解を深めてもらうためには、お互いの文化の発信力強化が必要なのだ。一青年としての私は、そのために身に付けた日本語を生かし、微力ながらも中日両国の誤解を解く事業に捧げていきたいと思っている。(編集/北田

※本文は、第十一回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「なんでそうなるの?中国の若者は日本のココが理解できない」(段躍中編、日本僑報社、2015年)より、莫泊因さん(華南理工大学)の作品「中日文化のつながりを構築しよう」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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