<コラム>中国の不動産バブルを崩壊させない「暗黙の了解」

山口 康一郎    2017年6月6日(火) 20時40分

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「北京や上海のバブルがもうすぐはじける」という話を聞き始めてからもう随分、時間が経ちました。そこには、「そんなに上がり続けるものではない。バブルというものは、いつかはじけるものだ」という考えが前提にありました。写真は中国の住宅地。

ほとんどの場合、開発計画時点でマンション開発業者や不動産関係者からの何らかの方法での優遇措置があり、場合によっては直接的な賄賂で許可されたりしてきたのである。

購入資金がなくても一番景観がいい部屋やマンション群の中で一番価値や人気がありそうな部屋を確保しておき、いろんな理由をつけて政府関係者向けに安く譲渡する。さらに銀行の方にも渡りをつけて融資を斡旋する。その見返りとして開発の認可に関する便宜を図ってもらう。便宜を図ってもらわなければマンション開発をすることが不可能に近い。銀行の融資で購入したマンションが銀行の担保以上に値上がりすると、値上がりした価値を担保に別のマンションを購入。それを繰り返して人が住まず家賃収入がなくても何軒もマンションを買えるのだ。

中国においては、まだまだ、法律制度が不備なうえに日本で言うところの条例レベル以下の慣習しか存在していない場合も多い。そこにおいて立ち退き交渉から電気、水道に関する細かい部分までそれぞれの担当が便宜を図ることによって不動産開発が可能になるという現実がある以上、俗に言う法治国家ではなく、人治国家であるというのは、言われても仕方のないことだ。それらの法制度やルール、慣習が改まる時期が来るのがいつになるかも分からない。改まったとしてもそれまでの既得権は消えない。

「みんなで渡れば怖くない」式で発展してきた中国において手に入れた既得権を手放すはずがない。うまく手に入れたマンションの価値を下げるような行為を推進する中国人は、1人としていない。権利の主張はするけど、自分のことは棚に上げるのも当たり前。よってもし、バブルがはじけるような状況になりそうなら、彼ら個人個人が暗黙の了解のもとで抵抗どころか、あらゆる手を使って価値が下がらない努力を官という力と権力を行使する。自分の保有する不動産の価値が下がらないように(いや上がるように)道路を作り、インフラを整備し、地下鉄を誘致する。個人個人として直接指示しなくてもそこには、同じ利益を共有する「暗黙の了解」が存在するので方向は変わらない。

2軒目を所有するとローンが組めなくなったりするなどの規制も強まってきてはいるが、1軒目で優遇された物件を手にしたらそれを親戚に転売したりすればその差益が手に入り、それを元手に買えばよい。また、70年権利償還のマンションだけでなく、50年償還の単身者向けで投資目的のマンションには規制が緩い。など抜け道はいくらでもある。

発展途上で発展し続けないといけない中国の現状では、これらのこともある意味、必要悪として人民の不満はあってもそれらの構造は黙認されている。だから若い人々も皆公務員になりたがる。皆、しょうがないと思っているし、しょうがないなら自分もそっちになりたいと思っているのだ。そして我田引水をしながら楽して自分に利益をもたらすことにせっせと励む。これら本音と建前が存在する以上バブルははじけない。というのが理由の1つだというのです。

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