<コラム>水道の漏水で年間3000億円損失している中国、注目のスマート水ビジネスとは

内藤 康行    2017年4月30日(日) 15時40分

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実はこの水道漏水問題は水汚染と水資源枯渇問題と深くつながっている。このような現状を突破すべく、次世代水道事業のスマート化改革が注目を集めている。資料写真。

PPP(官民連携)は一種の融資方式であると同時に、一種のプロジェクト整備方式でもあることから、PPPモデルの推進は、スマート水ビジネス産業に大きな影響を与える。2017年1月現在、財務部で承認されているPPPプロジェクト件数は1万828件。このうち環境保護プロジェクトは2334件で、全体プロジェクトの21.55%を占める。環境保護プロジェクトの中で、水プロジェクト(汚水処理、水利、給排水、水環境総合整備、スポンジシティー、地下総合管路等を含む)は80%を超えている。PPPと資産証券化は、全ての「社会資本」を動員することを意味する。PPPは政府のプロジェクト保証があり「安全」なプロジェクトと見做されている。

ここで中国の水ビジネス(上下水道)業界の特徴を説明したい。特徴1)収益モデルが成熟している、特徴2)相対的に他業界に比べ低リスク、特徴3)利益率は低いが持続安定したキャッシュフローを確保、特徴4)スマート水ビジネス市場拡大空間が大きいなどがある。したがって、水ビジネス業界の上記特徴は「PPP+資産証券化」モデルに合致していると言える。2017年2月、初めて批准された「PPP+資産化」プロジェクトはすでに41件となっており、この中で汚水処理プロジェクトは21件で全体の51.22%を占めており、企業はスマート水ビジネスプロジェクトの「PPP+資産証券化」モデルへの移行を強めている。

トレンド4:給水と汚水処理M&A・再編が加速

これまで都市水運営サービスは全て地方政府が提供と責任を負い、区域独占運営の特徴を有していた。世界貿易機関(WTO)加盟による市場化改革開放を経て、給水業界は外資や民間資本を誘導して以降、給水業界の事業社数は減少している。しかし給水業界の企業数は依然として多く、区域独占運営を維持しているのが現状である。

現在中国には664の都市があり、基本的には各都市に地場水道会社がある。しかし各水道会社の給水能力は小さく、規模不足は産業発展のボトルネックとなっている。このように、水ビジネスで規模拡大化を計ろうとすれば、そのトレンドはまさにM&Aしかないのである。政府側は、スマート水ビジネス運営業界の大型規模化を実現させるためにも国内の水ビジネス企業の合併を歓迎・支援している。この裏には中国が進める「一帯一路」に企業を参画させ、海外進出への糸口とする狙いもある。

重量級資産を持つ水ビジネス運営グループはすでにスマート水ビジネス構築のために投資を始めている。重量級水ビジネス運営グループは合弁経営やM&A等手段で積極的に水ビジネス市場のシェア拡大(国内外)を狙っており、まさに地域を超えた経営の大型規模化に布石を打っているのだ。

■筆者プロフィール:内藤康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般とそれに関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。

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