<コラム>キューバのカストロ前議長が死去、中国・習近平主席の弔電、600文字以上の異例の長さ

如月隼人    2016年11月28日(月) 10時0分

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キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が死去したことを受け、中国の習近平国家主席は26日、643文字に及ぶ異例の長文の弔電を、同国トップのラウル・カストロ国家評議会議長に送った。資料写真。

キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が死去したことを受け、中国の習近平国家主席は26日、643文字に及ぶ異例の長文の弔電を、同国トップのラウル・カストロ国家評議会議長に送った。

習主席は弔電で、「フィデル・カストロ同志はキューバ共産党とキューバ社会主義事業の基礎を築いた、キューバ人民の偉大な指導者だった」、「一生を、キューバ人民の解放、国家主権の維持、社会主義建設の壮麗な事業に精力的にささげた。世界の社会主義の発展と樹立に、不朽の歴史的貢献をした」などと、最大限の賛辞を示した。

さらに、「フィデル・カストロ同志は生前、中国・キューバの友好のために力を尽くした」、「彼自らの考えと支持により、キューバは中南米で最も早く新中国と国交を樹立した国になった」として、両国関係が長足の発展を遂げ、各分野の実務協力が大きな成果を上げ、両国人民の友情が日増しに増大したのは「すべでフィデル・カストロ同志の心配りと心血を注いだことと不可分である」と論じた。

習近平政権はキューバとの関係強化に力を入れてきた。2014年には習近平主席が、16年には李克強首相が同国を訪れ、フィデル・カストロ前議長とも会談し、政治、経済、人的交流などで大きな成果を上げた。

米国のオバマ大統領は、キューバとの関係改善に力を入れた。近隣国との関係安定化は、米国にとって安全保障上の国益にもかなう。さらに、中国とキューバの接近を警戒したことも理由のひとつだったと考えてよい。

中国のキューバ重視は、650文字近くという弔電の長さにもあらわれている。同国に対して「礼」を尽くすと同時に、文中で「社会主義」の語を繰り返すなどで、中国との関係強化は米国の場合とは異なり、同国の「体制問題」には影響しないとアピールしたと理解できる。

一方、米国のトランプ次期大統領はカストロ前議長の死去を受け、「自らの国民を60年近く抑圧した残虐な独裁者」、「すばらしいキューバ国民が最終的には自由を十分に享受して生活するよう動き始めることを希望する」などとする声明をフェイス・ブックで発表した。

キューバの現政権にとって、中国の習近平政権とトランプ次期米政権のどちらが「歓迎すべき存在」であることは、明らかだ。トランプ政権の政策には不透明な部分が多いが、キューバに対する政治的影響力、経済関係などで「中国の一人勝ち」になる可能性も否定できない。

◆解説◆

中国はキューバだけでなく、中南米(ラテンアメリカ)全域との関係強化を進めている。資源と市場の確保、米国に対する牽制などの思惑が見え隠れする状態だ。

さらに考えられるのは、「台湾問題」だ。台湾の蔡英文政権は、「ひとつの中国」を盛り込んだ「九二共識」を承認しない考えだ。中国は台湾との対話や協力の最低限の土台が失われたとして猛反発を続けている。

中国が、台湾を締め上げるさまざまな方法を繰り出して、台湾社会における蔡英文政権の支持低下や同政権に対する不安感・不信感の増大に力を注いでいくことは間違いない。

中国が講じる第1の手段は、経済分野となるだろうが、もう1つの手段として「国際社会からの、これまで以上の締め出し」がある。台湾と外交関係を維持している国は現時点で22カ国だ。地域別では、エルサルバドル、グアテマラ、ドミニカ、ニカラグア、ハイチ、パナマなど、中南米に12カ国が集中している。

今後、どの程度のものになるかは不明だが、中国が中南米に外交攻勢をかけるのは確実だろう。中国と外交関係を結び中華民国(台湾)とは断交する国が出ても、台湾として経済など実務面の痛手はさほどない。しかし、台湾人の不安が高まることは容易に想像できる。「民進党政権では、国際的な孤立がさらに加速する」との見方が高まれば、蔡英文政権にとって、やはり大きな打撃になる可能性が高い。(11月28日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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