<コラム>福原愛の結婚から考える、アジア人男性と結婚する日本人女性が増えている理由

浦上 早苗    2016年9月25日(日) 18時50分

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卓球の福原愛が台湾選手と結婚した。世論も祝福ムードが強いが、世界有数の経済大国かつ、「男性が稼ぎ、女性が家を守る」という観念が今も残る日本人の多くにとって、経済力に劣る(日本以外の)アジアの国の男性との結婚は、想像しがたいだろう。資料写真。

卓球福原愛が台湾選手と結婚した。相手が五輪選手、誠実そうなイケメンということもあり、世論も祝福ムードが強いが、世界有数の経済大国かつ、「男性が稼ぎ、女性が家を守る」という観念が今も残る日本人の多くにとって、経済力に劣る(日本以外の)アジアの国の男性との結婚は、想像しがたいだろう。

周囲の国際結婚の事例を見ても、配偶者がアジア人の場合、「日本人夫−アジア人妻」の組み合わせが圧倒的に多い。それでも、アジアの経済成長や日本人女性の価値観の変化で、私と同世代かその下の世代では、アジアの男性と結婚し、共働きしながら子供を育てる日本人女性が確実に増えている。大連には、旦那が中国人の日本人女性グループ「旦中会」まである。

中国には「イクメン」という概念は存在しない。既婚男性は基本的にイクメンであり、そうでないなら結婚できないか、結婚しても離婚されてしまう。とにかく、恋愛市場、結婚市場において女性の立場が強いのだ。デート中に男性が女性の荷物を全て持つのは当たり前だし、私の太極拳の先生(男性)は、子供の幼稚園のお迎えの時間が来ると、授業を切り上げて走り去ってしまう。

2年前のサッカーW杯ブラジル大会時には、中国で代行運転市場が爆発的に伸びた。ニュースによると、試合は中国時間の深夜から明け方に行われるが、家で観戦していると奥さんから「うるさい」と追い出され、夫たちはサッカーの試合が放映されている飲食店に車で出かける(この時期、あらゆる飲食店に大型テレビが設置された)。当然、酒を飲みながら応援することとなり、最後は代行運転を使って家に帰る。そのような夫の大量発生で、代行運転需要が数倍になったというのだ。深夜に声張り上げてテレビを見ている夫を追い出そうものなら、日本では「鬼嫁」と言われるだろう。

中国人女性と結婚した日本人男性も、次第に「教育」されていく。飲み会でも奥さんから「帰れコール」(「帰るコール」ではない)があると、たちどころに酔いもさめて、小走りに去っていく。料理もできるようになる。

偉い人も例外ではない。ある中国人外交官夫婦の場合、日本駐在時の朝食作りと子供の送り迎えは、外交官である夫の役割だった。昼食と夕食はシェフが作り、掃除はお手伝いさんが来るので、妻の役割は子供の習い事の送り迎えしかない。日本人ママ友たちに「社会的地位のある旦那にそんなことをさせて」と暗に批判された妻は、私にこう愚痴った。「私は旦那の仕事に付き合わされて、中国の仕事を辞め友達とも別れて日本について来た。旦那がこれくらいするのは当たり前だ」。

なぜ女性がこれほど強いか。中国人は「一人っ子政策の結果、男の子を希望する夫婦が増え、人口の男女比が歪んでいるから」と、理由を説明する。たしかに中国人男性は、持ち家がなければ結婚もままならない。しかし日本人の私から見ると、中国が共働き社会であることも、大きく関係していると思う。

社会主義国の中国は、基本的に共働きであり、夫婦の収入を基盤に、家を買い、旅行をし、教育費を投じる。以前、女性のイベントに招かれた時に、「専業主婦はいますか」と尋ねたら100人を超える参加者の中で、手を挙げたのはわずか1人だった。家事も育児も分担という意識は自然の流れだろう。

もちろんその分、女性側には「家計」の分担も求められる。中国人の同僚に、「日本は女性が高学歴、高収入だと、男性側がひいてしまうことも多い」と言うと、「中国人の夫にとっては誇りですよ」と驚かれた。日本の仕事を辞めて、結婚相手を探すために中国に戻った友人は、しばらくして「仕事がないと、結婚対象にしてもらえない」と、就職活動を始めた。

共働き前提の社会で育った中国人男性は、家事や育児を積極的に分担してくれる。私はかつて、料理が下手なことがコンプレックスだったが、中国の教え子たちが「私は料理ができないので、料理ができる男性と結婚したい」と堂々と言うのを聞いて、気が楽になった。そして彼らは、「家事力」「育児力」だけでなく、急速に経済力も身につけている。

台湾人男性も中国人男性と同じく、女性に優しく献身的であると言われる。福原愛選手は結婚会見で、「女性アスリートで結婚してプレーを続けるという方はあまりいなくて、夢を諦めるではないのですが、家庭に入ることでそうした活動が狭まると思っていた。彼(夫の江宏傑)はどんな選択をしても応援してくれると言ってくれた。彼の言葉、環境によっては夢をあきらめないで頑張っていくことも可能なんじゃないかと考えるようになった」と語った。

「結婚とキャリア」が天秤にかけられてしまう日本と、その両方を追求することが当たり前の中国。「自分の夢も家庭もサポートしてくれる」他国の男性を選ぶ日本人女性の増加は、女性の社会進出の一つの結果なのかもしれない。

■筆者プロフィール:浦上早苗

大卒後、地方新聞社に12年半勤務。国費留学生として中国・大連に留学し、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のメディア・ニュース翻訳に従事。日本人役としての映画出演やマナー講師の経験も持つ。

■筆者プロフィール:浦上 早苗

1974年生まれ、福岡市出身。早稲田大学政治経済学部卒業、九州大学大学院経済学府修了。大卒後、地方新聞社に12年半勤務。その後息子を連れ、国費留学生として大連に博士課程留学…するも、修了の見通しが立たず、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のニュース翻訳に従事。頼まれて映画に日本人役として出たり、マナー講師をしてみたり、中国人社会の中で、「日本人ならできるだろ」という無茶な依頼に、怒ったりあきれたりしながら付き合っています。マスコミ業界の片隅に身を置いている経験から、日米中のマスから見た中国社会と、私の小さな目から見たそれの違いを少しでもお伝えできれば幸いです。

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