<どうなる中国経済(2/2)>世界全面株安、「中国がすべての発生源ではなく、ダメージは日本や東南アジアの方が大きい」―津上・シンクタンク代表

八牧浩行    2015年9月7日(月) 7時36分

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津上俊哉・津上工作室代表取締役は、世界経済が減速し、全面株安となっていることについて、「中国がすべての発生源ではない」とした上で、「日本では中国のニュースを『対岸の火事』視しているが、ダメージは中国より日本や東南アジアの方が大きい」との見方を示した。

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2015年9月、中国経済が変調をきたし、世界の金融市場が動揺している中で、中国経済に詳しい専門家2人が「どうなる日本経済」と題して日本記者クラブで講演した。通産省時代に中国駐在の経験がある津上俊哉・津上工作室代表取締役は、世界経済が減速し全面株安となっていることについて、「中国がすべての発生源ではない」とした上で、「日本では中国のバッドニュースを『対岸の火事』と双眼鏡で眺めているが、ダメージは中国より日本や東南アジアの方が大きい」との見方を示した。津上氏の発言要旨は次の通り。

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中国ではリーマンショック(2008年)後、3000兆円も投資してきたが、投資頼みの「成長かさ上げ」路線はもはや限界。その後遺症が不動産や金融などの面で深刻化。無理な投資は続けられない。7.0%のGDP成長を目標としているが、実際は5%以下ではないか。中国当局はポストバブル期の経済運営の在り方を模索。今後は効率重視の中高速成長時代を目指すべきだとする「新常態(ニューノーマル)」論を展開している。

メディアの中には中国経済が崩壊するとの予想もあるが、経済の崩壊はない。中央の財政は余裕があり、地方政府の債務危機を中央政府が救済する地方財政改革が動き出した。地方の債務18兆元(約330兆円)は最後に国が責任を持つ代わりに、今後は中央政府が厳しく統制、債務圧縮に従わせる。金利は国債並みの低水準で、暗黙の政府保証といえ、金融界は年間6000億元(約10兆8000億円)の減収となる。金利自由化も進展し、地方中小銀行は淘汰される可能性がある。地方財政危機を中央政府が未然に防止した形だが、国債金利上昇の後遺症も生じる。

日本型の不動産バブル崩壊は起きない。1992年から2000年までに日本の不動産価格は4分の1になったが、中国では考えられない。市場は二極化しており、地方中小都市は回復の見込みはないが、北京、上海広州、などは戻り傾向にある。ただ、上物の建設が落ち込み、建設、鉄、セメント、家電などの業界に影響を与える。

昨秋からの中国株の急騰は、不動産不況、金融緩和、官製上げ相場への過信、信用取引などが要因。資産残高10万元(約180万円)以下の零細株主が株主数で過半数を占めるが、全株式の3分の2は国と関係企業が保有、大損した株主が反乱を起こすというのは日本の週刊誌などの幻想だ。

人民元の切り下げは元の国際化が目的で、「輸出促進が狙い」というのはメディアの勝手な読みである。3%の下げ幅では、輸出促進や景気浮揚の効果はほとんどない。IMFから市場に基づいたレートとするよう宿題があったのを受けたもので、IMFは歓迎のコメントを出した。メディアで取りざたされている中国の資本流出(キャピタルフライト)危機は時期尚早。人民元の先安観を背景に中国国民と企業の外貨選好が高まっているが、海外への資金流出とは別物だ。中国では輸出が減退しているが、輸入がそれ以上に縮小しているので、貿易黒字は拡大している。

中国は欧州全域の面積があり、ギリシャのような地域からドイツのような先進地域まで多岐にわたる。景気も「まだら模様」であり、一概に論じることはできない。

世界景気が減速しているが、中国がすべての発生源ではない。日本では中国のバッドニュースを「対岸の火事」と、双眼鏡で眺めているが、ダメージは中国より(対中依存の高い)日本や東南アジアなどの方が大きいと思う。その点、マーケットはよく分かっており、世界で株が急落している。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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