<新安保法制>自衛隊活動地域が世界中に拡大、求められる米軍の肩代わり=戦争リスク回避へ、対中関係改善を!―山崎拓・元自民党幹事長が批判

八牧浩行    2015年5月22日(金) 7時44分

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21日、山崎拓・元自民党幹事長は日本記者クラブで講演。新安保法制によって、これまでの「専守防衛」から大きく踏み出し、他国の戦争につきあうことになる、と指摘した上で、「自衛隊はその能力があるのか。日本は膨大な軍事予算を出せるのか」と疑問を投げかけた。

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2015年5月21日、防衛庁長官などを務めた山崎拓・元自民党幹事長は日本記者クラブで「日米安保を考える」と題して講演した。新安保法制によって、これまでの「専守防衛」から大きく踏み出し、他国の戦争につきあうことになる、と指摘。「世界の警察官」の役割を果たせなくなった米国が日本に肩代わりを求め、自衛隊が出動する地域が世界中に広がることになった、と断じた上で、「自衛隊はその能力があるのか。財政難の日本は膨大な軍事予算を出せるのか」と疑問を投げかけた。

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集団的自衛権を軸とする新たな安保法制は問題点が多く、世論調査でも国民の大多数が疑問を抱いている。十分に審議をして拙速を避けるべきだ。野党の言い分も丁寧に聴き、修正も受け入れるべきだ。

歴代の政権は、憲法9条の解釈に基づき、集団的自衛権行使について「権利を保持するが、行使はできない」との見解を取り続けてきた。私が官房副長官を務めた、タカ派の中曽根康弘政権もこの立場を堅持した。集団的自衛権行使は憲法で規定された「専守防衛」から大きく踏み出し、他国の戦争につきあうことである。行使を容認するなら、国民投票にかけ憲法を改正するべきである。最高法制が時の政府の方針によって変わるのは、法治国家として問題だ。憲法9条の在り方について、審議が十分尽くされておらず、政府を糺す(ただす)のは国会の責務である。

これまでに日米安保条約では(米国に防衛を依存する)片務性の見返りとして、米軍基地を認めてきた。今回、米国は国力の衰退と財政難で「世界の警察官」の役割を果たせなくなったから、日本に肩代わりを求めてきた。自衛隊が出動する地域が極東だけでなく地理的に世界中に広がることになったが、自衛隊はその能力があるのか。日本も財政難であり膨大な軍事予算を出せるのか。少子高齢化の中で自衛隊の人員確保も容易ではない。世界中に自衛隊を展開すれば、本来の日本周辺の防衛がおろそかになる。

新法制では「後方支援」に限るとしているが、戦時においては「正面」と「後方」(兵站)は一体だ。区別はつきにくく、戦争相手国の攻勢の対象になりやすい。撤退するかどうかは現場の判断に任せるというが、現場で判断できるのか?どの程度の武器を持たせるのか?「大丈夫だ」というレトリックでは危険すぎる。

中国は軍事予算を増大させ、いずれ米国を追い抜く可能性がある。米中が中心となる「新しい大国関係」になっていくこともあり得る。中国と話し合いができる(友好)関係を築くことが重要だ。自民党に真の国防議員や日中間を取り持つ議員がほとんどいないことに危機感を持っている。

日本の国防の基本方針は(1)国連中心主義(2)日米同盟堅持(3)アジアの一員として協調する―の3点。日米同盟は強化されたものの、中国、韓国との間がうまくいっていない。外務省はこれらの国々との関係修復へ外交努力が必要だ。財政難からODA(政府開発援助)が激減したため、これに代わる外交手段として新たな安保法制を位置付けているようだが、赤字に陥っている日本の財政事情を考えると疑問だ。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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