<コラム>香港の民主と自決を主張する若者が日本人に向け熱弁、20歳にして国際的影響力も

如月隼人    2017年6月16日(金) 14時40分

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東京大学駒場キャンパスで14日、「香港返還20周年・民主のゆくえ」と題するイベントが開催された。写真は香港。

7月1日は、林鄭月娥(キャリー・ラム)氏が行政長官に就任する日でもある。同氏はこのところ、民主派などに対するソフトな姿勢が目立つが、黄氏らは、結局は中国共産党にコントロールされており、中国に従うという点で、これまでの長官と違いはないと主張。習近平政権は今後、香港に対してもっと強硬な姿勢を示すとの予想だ。

国際的な連携については、台湾や米国英国、さらに東南アジアでも民主を理解する人々に対する働きかけを進めているという。なお、最近の報道を見ても、米議会の委員会が香港問題について公聴会を実施したり、台湾の立法委員(国会議員)が香港の民主勢力を支援する委員連盟を結成するなどの動きがある。黄氏らの動きは徐々にではあるが、実績を積み重ねているようだ。

■政治運動の原点は、「素朴な愛郷心」、中国当局の押さえ込みは通用するのか

香港や台湾では、若者の政治意識が極めて強い。その背景には「中国による圧迫」がある。一方で、日本では若者を含め社会全体の政治に対する関心度は香港や台湾に遠く及ばない。

周氏は日本の若者に対するメッセージとして、「政治は私たちの日常生活に関係があります。日本の学生も、不正義、不公平が目の前にある時は声を上げてください。解決には長い戦いが必要ですが、自分の住んでいる国には責任があるのです」と述べた。

黄氏は、香港人のアイデンティーについて、まずは「香港人」が何を意味するかが難しいと主張。1997年までは英国の植民地であり、さらにその前は中国の一部だった。さまざまな要素が混じっている。また、香港人の93.6%は華人(中国系住民)だが、その他の民族も6.4%存在する。黄氏は香港の多民族性にも触れ、「香港を守りたい、香港のためになにかしたいと思うこと。これがアイデンティティーだ」と述べた。

黄、周両氏とも、政治運動の原点が特定の主義主張や利害にあるのではなく、素朴な愛郷心であることがよく分かる発言をした。極めて純粋な発想と評価してよいだろう。

考えてみれば、香港では150年あまり続いた英国の植民地時代、中国の文化大革命中の一時期に中国共産党の影響下にあった住民らが起こした暴動を除けば、英国支配に対する大きな反抗はなかったと言える。民主はなかったが人々は広い範囲に及ぶ自由を謳歌し、自らの生活を向上させることに懸命になった。

香港の中国返還では多くの香港住民が不安を持ったが、「1国2制度」はうまく機能しているように見えた。特に、2003年に始まった「中国本土・香港経済連携緊密化取決め(CEPA)」など、中国本土との提携強化は香港経済に大きな恩恵を与えた。

しかし2010年ごろからは、中国に対する反発が特に目立つようになった。中国当局は神経質に対応するようになり、「繁栄と安定」をことさらに強調するようになった。

当局が「安定」を求めることは理解できる。しかし安定維持のために「反対意見を力で押さえ込む」という手法が、どこまで通用するのだろうか。まして香港は、言論の自由などが長く認められてきた社会だ。異民族による統治が終了し、自らの統治機関を有するようになれば民主を求める声が高まるのも自然な成り行きだ。「それはおかしい」と思えば、そう主張する人が必ず出てくると考えねばならない。「力による安定の追求」がかえって不安定さを呼ぶことにならないのだろうか。

中国政府は香港返還後の20年間で、経済全体を引き上げることでは「合格点」を達成したが、人心を収攬(しゅうらん)する点では、英国統治時代ほどにも成功していないとも言える。香港のこのところの状況を見ると、中国の統治手法には「技術上の欠点」があるように思えてならない。

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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