<コラム>中国とつきあうテクニック、「主敵」を絞り込む発想の理解を

如月隼人    2017年4月21日(金) 1時0分

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前回のコラムでは、外交などにおける中国人の発想として「主敵を絞り込み」、「主敵以外との対決は避ける」傾向が強いと書いた。もう少し説明してみたい。資料写真。

さて、中国人によくみられる「主敵の絞り込み」の傾向にはどう対応すればよいのか。まず、相手の中国人側と対立が生じている場合だ。その場合にはまず、こちら側が「主敵」とみなされているかどうかを慎重に判断する場合がある。「主敵」とされていないなら、対立をエスカレートさせるのは通常、得策ではない。対応次第でこちら側に有利な結果を引き出せる可能性が高いからだ。ここでいたずらに対立を激化させてしまったのでは、中国人側に「次期主敵」とみなされる恐れがある。

次に「主敵」とみなされている場合だ。こちら側としても、どうしても妥協できないなら、全面対決しかないことになる。ただし、中国人には十分な絞り込みをした上で「主敵」を設定する傾向があることは認識しておくべきだろう。こちら側としても相手側を「主敵」とみなすべきかどうかは、よく判断する必要がある。可能ならば「敬して遠ざける」状況を続ける方法もある。

中国人側との関係が良好な場合にも「主敵」を巡る問題が発生する場合がある。日中の外交で生じた典型的な事例が、1978年締結の日中平和友好条約だ。74年の予備交渉開始時から、中国は「反覇権条項」を盛り込むことを強く主張した。当時の中国にとって「主敵」だったソ連を念頭においた条項だった。つまり、中国側は「味方」である日本に対して「主敵への攻撃」に加担するよう求めたことになる。

日本としては、中ソの争いに巻き込まれて対ソ関係を悪化させたくなかった。当時は日ソ平和条約締結の可能性が考慮され、同条約が締結できれば北方領土問題を解決できる望みが出てくると考えられていたからだ。そのため日本は中国の主張に強く抵抗した。中国側はなかなか妥協しない。「反覇権条項」を知ったソ連は反発した。日中は最終的に「この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない」との条文を入れることで合意した。

ここまで中国人に多くみられる「主敵」の発想を紹介したが、本論はこの発想を「是とする」ものではないことを付け加えておく。ただ、中国人側に「主敵とそれ以外」を峻別する傾向があることを知っておけば、こちら側も対応指針を立てやすいことになる。特に、中国人側がこちら側に対する批判を繰り返していても「主敵」とは見なしていないと判断できる場合、対応のよりよい選択肢を取りやすくなるように思える。

なお、この「主敵」の明確化ついてはさらに広く、「一点突破の徹底」の発想の一環と理解することができる。「一点突破」については稿を改めてご紹介したい。

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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