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中秋節を彩る月餅市場。老舗ブランドが堅実な人気を保つ一方、新興ブランドが革新的な製品で消費者の注目を集めている。
中秋節を彩る月餅市場。老舗ブランドが堅実な人気を保つ一方、新興ブランドが革新的な製品で消費者の注目を集めている。一方、人気ブランド「好利来(Holiland)」の月餅価格を巡る議論がネット上で展開されている。
人気ベーカリーブランド「好利来」が月餅の価格設定を巡り大きな議論を巻き起こした。特に「蛋黄紅蓮(蓮の実と卵黄)」月餅の単品価格27元(約540円)は多くの消費者に「高すぎる」との印象を与え、インターネット上で活発な意見交換がなされている。一部のネットユーザーは、グラム単価で比較した場合、好利来の月餅は他の類似商品より著しく高価だと指摘し、「月餅刺客」とやゆする表現まで現れた。
この現象は、「メリハリ消費」がトレンドとなる中で、コストパフォーマンスを重視する消費者が商品の「価値」をどのように評価するかという、より深い問題を提起していると言えそうだ。好利来の店員は、高品質な小麦粉、厳選された塩漬けアヒルの卵、高品質なクリームを使用しているため、製造コストが上昇すると説明している。
1個27元という価格が客観的に「高価」であるか否かは、多角的な視点から分析する必要がある。好利来が主張するように、高品質な材料の使用にこだわれば、製造コストは必然的に上昇する。また、添加物不使用の製法や、特定のフレーバーの人気、さらには月餅自体の重量も価格に影響を与える要素となる。
むろん、ブランドイメージや顧客からの信頼も価格に反映される要素であり、製造工程における手作業や、無形資産ともいうべき独自技術の採用もコスト増の要因となる。こうして見ると、消費者がスーパーマーケットで手軽に購入できる月餅と比較すれば、バラ売り単価27元が一概に高価と断じることはできないという見方もある。ただ、一部の試算では、好利来の「蛋黄紅蓮」月餅の直接原価は約7.24元/個とされ、これに物流損耗や人件費(特に手作業工程)を加味すると、総コストは約10.44元/個と目されている。
中国の月餅市場は、長年にわたり培われた老舗ブランドと、新たな潮流を取り込む新興ブランドが共存する二重構造を呈している。光明邨、杏花楼、美心といった老舗は広式、蘇式、京式、滇式など地域に根ざした伝統的な製法と味覚を堅持し、その伝統的価値が消費者に強く支持されている。上海では光明邨の鮮肉月餅が人気を博すほか、「嫦娥奔月」のパッケージで知られる杏花楼は代表的なブランドだ。後者は、伝統的な味覚だけでなく、「台式牛乳冰沙月餅」といった中欧折衷の味覚の商品を投入し、伝統と現代の融合を試みている。
元祖食品の「雪月餅」やハーゲンダッツの「アイスクリーム月餅」といった洋菓子ブランド勢力が市場に新風を吹かせていることも注目に値する。若年層を中心に支持を集め、月餅の消費シーンを多様化させているのだ。健康志向の高まりに応じた低糖・無脂月餅や、功徳林の浄素月餅のようなビーガン対応製品も登場しており、消費者の多様なニーズへの対応が進んでいる。
中国政府は近年、市場の健全な発展と消費者の利益保護を目的として、「天価月餅」と形容される非常に高額な月餅に対する規制を強化している。2022年6月に発表された「『天価』月餅の抑制と業界の健全な発展促進に関する公告」では、単価500元(約1万円)を超える箱入り月餅の重点監管、包装層数の上限、他商品との混載禁止、包装コスト比の上限などが設けられた。さらに、腐敗や浪費助長を防止するため、フカヒレなどの高価な食材を用いた贈答品としての利用も禁止された。
しかし、その一方で、好利来のように価格の適正性を巡って議論が巻き起こることもある。また、月餅を巡る消費トラブルの報告も後を絶たない。商品の虚偽表示や添加物の不適切な使用、原材料の偽装といった品質問題が顕著で、卵黄も蓮蓉も含まれていない商品が「双蛋黄蓮蓉月餅」として電子商取引プラットフォームで販売されるケースも確認されている。これは、オンラインプラットフォームにおける商品表示の曖昧さと、プラットフォーム側の監督責任の欠如を浮き彫りにしていると言える。
中国の月餅市場は、伝統の継承と革新の追求という二つの潮流が交錯し、多様なニーズに応えながら進化を続けている。老舗ブランドはその歴史と信頼を背景に伝統の味を守りつつ現代的な要素を取り入れ、新興ブランドは型破りな発想で月餅の新たな可能性を切り拓いている。
しかし、月餅が本来の大衆消費財としての位置付けに回帰し、透明性を高めた市場で取引されるまでには、まだ克服すべきハードルが存在する。ECの消費トラブル対策では、サプライヤー企業に対しては一層の品質管理と情報開示を、プラットフォーム事業者には監督責任の強化をそれぞれ促していくことが求められるだろう。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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