<大学の国際化(下)>有力大「MARCH」「関関同立」、グループ内で明暗―「ランキング至上主義」に弊害も

八牧浩行    2014年12月16日(火) 5時23分

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「スーパーグローバル化大学」への応募は全体で104大学に上ったが、選考過程で37大学に絞られた。特に明暗がはっきりしたのは「牽引型」。「MARCH」と称される東京都内の有力5私大と関西地区の4大私大「関関同立」の各グループ内で明暗が分かれた。写真は東大。

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文部科学省が大学の国際化を後押しする背景には、日本の大学の閉鎖性がある。大学の教員に占める外国人の割合は、米ハーバード大(30%)や英ケンブリッジ大(40%)など海外の有力大が軒並み2割を超える中、日本は平均4%(2012年度)。学士・修士課程に在籍する留学生の割合も3%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均(8%)を下回る。

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海外の研究者との連携不足も課題だ。日本の全論文数に占める国際共著論文の割合は26%で、英国(52%)や米国(33%)と差がある。文科省幹部は「このままでは高等教育の世界で日本は取り残されてしまう」と危機感を露わにしている。

「大学ランキング」が普及している英国では、各大学が「ランキング結果」に一喜一憂し、「学生の満足度」にも神経を使っている。従来ランキングへの抵抗感が根強い日本でも、その存在感は少しずつ高まっている。少子化が進む日本では、大学は国公私立を問わずいかに優秀な学生を入学させるかが大きな課題となっている。その際、教育水準やブランド力がものを言うが、「大学格付け」や「大学ランキング」である。「大学の国際化」が叫ばれ、大学ランキングへの注目は高まっている。政府は昨年時点で約13万5千人の外国人留学生を2020年までに30万人に増やす目標を打ち出しており、留学先選びの参考になるランキングは軽視できない。

◆日本、世界トップ級と大きな格差

しかし、世界トップ級の大学との格差は大きい。米国の有力大学は数千億円もの外部資金を集め、海外から優秀な学者を招いたり、研究施設を整備したりする。一方、日本の国立大学が受け取る運営費交付金は、国立大が法人化した04年度から昨年度までに約13%、1600億円以上減った。北大、東北大、筑波大、東大、東工大、名古屋大、京大、大阪大、九州大、早大、慶大の11大学で構成される「学術研究懇談会(RU11)」の学長は、日本の大学の教育・研究環境の劣化と、ほかのアジア勢の猛追に危機感を表明。運営費交付金や科学研究費補助金の拡充を訴えた。

スーパーグローバル大学構想を推進してきた文科省幹部は「この構想が実現すれば結果として日本の教育や研究を底上げすることが可能となる」と期待する。この目標は、産業界の悲願でもあり、企業経営者らで構成される内閣府・産業競争力会議が提案、安倍政権の成長戦略に盛り込まれた。

 

ただ、東大や京大など今回選ばれた「トップ大学」の顔ぶれに、ある国立大の教授は「以前から助成金が多く選出が予想されていた大学ばかりだ。大学間の格差が広がることを懸念する」と語る。国の「お墨付き」を得た大学は、今後のグローバル化関連の予算獲得が有利になる一方、選ばれなかった大学は今後運営面で厳しくなる、との見方もある。政府主導の「ランク化」で大学間の格差が広がることを懸念する声も存在する。一方で、「選出された大学は新たな“政府支援ブランド”を手にしたことになり、受験生獲得などで有利になる」と予想する予備校関係者も多い。

◆国民生活向上や地域振興につながる指標が必要

「スーパーグローバル化大学」への応募は全体で104大学に上ったが、選考過程で37大学に絞られた。特に明暗がはっきりしたのは「牽引型」。東京都内で、ライバル関係にある「MARCH」と称される有力5私大のうち、明治大と立教大、法政大が選ばれたのに対し、青山学院大と中央大は選から漏れた。関西地区の4大私大「関関同立」のうち、関西学院大と立命館大が採択され、同志社大、関西大は選ばれなかった。

 

有力大学の一橋大、神戸大も選ばれなかった。一方で創価大、国際大、会津大、立命館アジア太平洋大など特色のある大学が入り、話題を呼んでいる。教育関係者は「国際化を進めるため学内を大胆に改革しようという意思と実行力が問われた」と分析している。

 

ランキング先進国英国内でも、「ランキング争いは、一度始まると止められない軍拡競争のようなもの。地域への貢献度など測れないものも多い」と懸念する声もある。日本の大学は、「順位」だけを目標とすることなく、教育力のさらなるアップや国民の生活の質向上や地域振興につながるような大学づくりが求められている。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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