安倍首相の「今のうち解散」に大義なし=12月総選挙、国民経済にマイナス―内閣支持率も30%台に急降下

八牧浩行    2014年11月21日(金) 14時42分

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21日、安倍首相が衆院を解散、12月14日に総選挙が行われることになった。消費増税先送りや安倍政権の経済政策「アベノミクス」を争点となるが、安倍政権の延命と長期政権づくりを狙った「個利個略」との声が多い。写真は安倍首相と山口公明党代表。

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2014年11月21日、安倍首相が衆院を解散、12月14日投開票の日程で総選挙が行われることになった。消費増税先送りや安倍政権の経済政策「アベノミクス」を争点となるが、年末の慌ただしい時に政治的空白をつくり700億円もの巨費をつぎ込む総選挙は国民経済的に明らかにマイナスであり、安倍政権の延命と長期政権づくりを狙った「個利個略」との声が多い。

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消費増税は2012年の自公民3党による「税と社会保障の一体改革に関する合意」で決めたもので「国会議員の定数削減」など付帯事項が付けられた。ところが一体改革も定数削減も全く実現しておらず、消費税率だけ第一弾として今年4月に8%に引き上げられた。

2四半期連続のマイナス成長という深刻な景気状況下では消費再増税どころではないのが実情で野党各党も反対していない。消費増税法には経済状況を総合的に見て判断する「景気条項」があり、これを適用して「再増税見送り」を決めるのが筋で、解散する必要はない。

ところが政府与党は「解散」という奇手で不都合な状況を乗り切きることを狙った。

政治資金を巡る閣僚らの相次ぐ不祥事をリセットするととともに、来年以降、不人気の集団的自衛権や原発再稼働などの審議で予想されるアベノミクス政治の失速を回避するため先手を打ったのだろう。景気対策や低所得者対策、歳出削減などの努力を尽くさず、対策の立案と実行に空白期間をつくる解散に出たことに対し、「アベノミクスの失敗を隠ぺい、長期政権の基盤を確保することを狙った個利個略解散」と酷評する向きも多い。

今回選挙の最大の争点はアベノミクスと消費増税延期問題で、安倍首相も照準を合わせている。しかし、大手新聞の世論調査ではアベノミクスの成否を問うという解散理由に65%が「納得しない」と回答、「納得する」は25%にとどまった。安倍内閣の支持率も支持39%、不支持40%で、初めて逆転した。暮れの多忙時に巨費を投入して、何のための解散か―。日本国民はことの本質を直感で見抜く力があるのだろう。

この秋口から政界では「今後支持率を悪化させる問題が続出するので、野党の準備が整う前に早期に解散した方がよい」という言説が飛びかっていた。集団的自衛権の法制化や原発再稼働などで支持率がやがて落ちるという判断だ。安倍首相はこの「今のうち解散」論に飛びついたことになるが果たして有権者の選択はいかに?(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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