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ヤクルトが「乳酸菌飲料 世界売上No.1」でギネス認定を得た。
「世界No.1」は最強の一行コピーだ。だが、使える場面は限られる。中国では広告法の縛りも厳しい。こうした中、ヤクルトが「乳酸菌飲料 世界売上No.1」でギネス認定を得た。創業90年の蓄積を背景にした世界一の称号は信頼を可視化する装置としてどこまで効くのか。
企業というものは、えてして「No.1」という言葉に弱い。短く、インパクトがあり、市場競争の勝利宣言でもあるからだ。だが、この言葉を軽々しく口にした瞬間にうさんくさくなることもある。そこで登場するのが「ギネス世界記録」という便利かつ圧倒的な権威だ。
今年、創業90周年の節目を迎えたヤクルトは、14日に「乳酸菌飲料 世界売上No.1(Best-selling probiotic dairy drink brand–retail sales value,current)」としてギネス世界記録に認定された。話題づくりを越え、数字に裏打ちされた信頼が見える化されたと言ってよい。
小さなボトルに、科学と健康習慣のエッセンス、そして少々のノスタルジーを詰め込んだヤクルト。ギネス認定の根拠は2024年1年間の小売売上額。選び続けられた実績の堆積が可視化された。
肝心なのは、今回の告知を打ち上げ花火で終わらせない設計だ。ヤクルトは認定発表に合わせ、日本国内で限定フレーバー「Newヤクルト ピーチ味」を期間限定で発売する。記念式典(第一波)に続き、限定発売(第二波)を重ね、認定ロゴ入りパッケージで棚前の視覚接点を増やす。こうすることでギネス認証の話題は店頭へ橋渡しされ、余韻は長期に伸びていく。
中国ではギネス認定はしばしばスケールの演出に用いられる。例えば、アリババの「ダブルイレブン(双十一節、独身の日)」は24時間オンライン売り上げの世界記録で注目を集め、年次イベントの権威付けに成功してきた。
飲料大手では23年に伊利(Yili)が「単一会場とオンライン同時のチーズ試食会参加人数」でギネス認定を獲得し、参加の熱量を可視化した。規模、参加、同時性といった集客の数字を前面に出す手法だ。
これに対し、今回のヤクルトのケースは規模の誇示ではなく、選ばれ続けた事実で安心を演出する設計だ。効能を声高に語らずとも、購買の結果が失敗しにくい選択を後押しする。ここに世界No.1の本当の効き目がある。
見逃せないのは、「世界No.1」という標語に法の壁があることだ。中国の広告法は「最高」「唯一」「No.1」といった絶対表現を原則禁止する。一方、国家市場監督管理総局(SAMR)の運用指針(2023)は、第三者の客観データで期間、範囲、指標が明確な場合の扱いを示し、過度な摘発を抑制する枠組みを示している。
ゆえに、ギネス認定は制約を回避し得る数少ない経路となる。主観ではなく第三者による客観的証明だからだ。ただし、指標・期間・範囲の明記、ロゴ使用の許諾、媒体ごとの注記設計が不可欠になる。これらを怠れば、インパクト抜群の一行コピーはリスクへと変わる。
ヤクルトは今年、創業90周年を迎えた。つまるところ、世界一の獲得とは企業が積み重ねてきた時間を一つの数字に凝縮する行為だ。記録は一行で伝わる。だが、安心と信頼は日々の蓄積でしか積み上がらない。
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