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中国で「ハードディスカウント」店舗が急増している。
中国で「ハードディスカウント」店舗が急増している。SKU(商品の受発注・在庫管理の最小単位)を削り、プライベートブランド(BP)で中間マージンを圧縮し、恒常的低価格を実現する仕組みだ。日本のEDLP(毎日低価格)やPB強化と親縁性はあるが、供給網の組み替え、都市構造、消費心理の3点で差異がありそうだ。
中国で最近、「ハードディスカウント」という言葉を目にする機会が増えた。意味するのは日常的に低価格を維持する業態だ。この領域に美団(メイトゥアン)が参入した。「快楽猴(クァイラーホウ)」も杭州で9月に3店を開業し、間もなく北方エリアにも広げる。24日開業予定の北京1号店は約1000平方メートルと伝えられている。
値下げをイベント化するのではなく、低価格そのものをオペレーション化しているのがハードディスカウントだ。SKUを減らし大量仕入れ、製造直結、店舗装飾や広告を最小化、これらを一体で設計する。都市の外縁に出店して固定費を抑えつつ、近隣需要を面で取り込む動きも目立つ。
盒馬(フーマー)は低価格業態を数百店規模に拡大し、京東は大型店で集約調達と集約体験を提示している。価値基準は「コストパフォーマンス」から「クオリティーパフォーマンス」へ移行し、価格は品質保証の指標として再定義された。
ハードディスカウントの成功要因は、一時的なプロモーションではなく、構造的なコスト削減にある。SKUの絞り込み、製造直結型のPB開発、そして店舗運営の徹底的な効率化が三位一体となって機能することで、恒常的な低価格が実現する。
「快楽猴」の北京1号店は五環外に立地し、家賃と人件費を抑えつつ、住宅、学校、病院を束ねて需要密度を確保する。京東は5000平方メートル×5000SKUで一括体験を演出。盒馬や物美はPB比率を6割に高めて収益の分散を抑える。
PBは補助的なサブブランドではない。集客と定価回転を両立させる動線だ。SNSで拡散されるお得情報は価格にストーリーを与え、衝動ではなく合理で買う動機をつくる。
美団「快楽猴」:都市外縁立地で固定費を最小化、需要密度の高いエリアを選定
京東:大型店舗(5000平方メートル)で集約調達と一括体験を実現
盒馬、物美:PB比率6割で収益構造を安定化
不確実性が高まるほど、消費者は価格破壊の見出しよりも失敗確率の低い選択を望む。「ハードディスカウントは自己効力感を可視化する装置だ。店頭ですぐ確かめて買えることがオンライン購入の不安を補う。
日本でも物価上昇局面でPB、冷凍食品、簡便調理が伸び、「まとめ買い」と「こだわり買い」の二層行動が定着した。ただし信頼の源泉は異なる。中国はプラットフォームのネットワーク、日本は店舗の顔と地域との関係だ。
結局、求められているのは単なる「安さ」ではなく、「外さない買い物」という安心だ。
勝敗を分けるのは価格水準ではない。鍵は「需要変動に即応する動的MD(マーチャンダイジング)」「地域嗜好に合致させるご当地PB開発」「店舗と統合したラストワンマイルの情報・物流一元化」の三つだ。同質化が進めば、価格は利益を削る刃になる。生き残るのは素材、仕様、容量、物流単位までさかのぼって最初から安く作る企業だ。原価設計の深さが参入障壁になる。
価格破壊を伴う価格競争とは企業が探索・判断コストを肩代わりすることでもある。だから小売の使命は安さの理由を設計して再現可能にすることだ。「SKU削減と供給網起点のPB設計」「地域コミュニティーとの継続的な信頼構築」の二つがそろって初めて、低価格は持続可能な条件になる。トレンドの背後には生活の安定需要がある。
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