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29日、台湾のポータルサイト・vocusに劇場版「チェンソーマン レゼ篇」を分析した記事が掲載された。写真はチェンソーマン。
2025年9月29日、台湾のポータルサイト・vocusに劇場版「チェンソーマン レゼ篇」を分析した記事が掲載された。(本記事はネタバレを含みます)
記事は、「『チェンソーマン』は藤本タツキ氏の漫画が原作。チェンソーの悪魔・ポチタと共に貧しい生活を送っていた主人公・デンジが、ある出来事をきっかけにポチタと契約し、チェンソーマンとして活躍するダーク・ファンタジーだ。続編となる劇場版『チェンソーマン レゼ篇』では、デンジが謎の少女・レゼと出会い、予測不能な運命に巻き込まれていく。一見すると、ポチタのかわいらしさと貧しい少年との組み合わせから、ほのぼのとした物語かと思ったが、大きな誤解であった。『チェンソーマン』は悪魔、ハンター、契約などの世界観が非常に残酷であり、漫画は数ページごとに手足が切断され血肉が飛び散るグロテスクな描写が登場する。キャラクターが突然死ぬことも珍しくなく、この世界の人間性、利害交換、荒唐無稽さが鮮烈に描かれている」と述べた。
続けて、「この環境下では、人間も魔人も悪魔も自己優先が当たり前であり、力の強い者ほど好き勝手に振る舞えるという生存の法則を理解する必要がある。また、社会は戦闘と混乱に満ちており、高尚な理念は生存の前に無力であり、観客は愛するキャラクターが無惨に倒されるのを常に恐れながら読み進めることになる。物語がこれほど重くシリアスである一方、デンジは本能的で無鉄砲、勇気はあるが無謀という野獣のような性格を持つ。さらに物語の主人公であるにも関わらず、大志も良心も倫理観も欠如した設定は珍しい。また『人は必ず立派な夢を持つべきなのか』と問いを暗示することで作品に独自性を与えている。デンジの成長背景を考えれば、彼は平凡な少年として、三食の安定と寝床、かわいい女の子との交流を望むだけなのだ」と説明した。
また、「藤本氏はレゼ篇で『田舎のネズミと都会のネズミ』の寓話を巧みに引用している。田舎のネズミは安全に暮らせるが、おいしいものは食べられない。一方、都会のネズミはおいしいものを食べられるが、人や猫に殺される危険性がある。同作のキャラクターはデビルハンターとして命を賭けるか、戦闘を退くかの選択に直面しするが、それぞれ性格や生き方が異なるため、物語の展開や選択は観客の神経を刺激し、自分自身が人生や夢にどう向き合うかを考えさせられる」と言及した。
さらに、「第1部はデンジの成長物語であり、愛とは何か、人間としてどう生きるかを学ぶ過程が描かれた。一方レゼ篇では、色欲に駆られる少年が2人の美女に翻弄されるように見えるが、実際には3人とも愛と親密さを渇望している点で共通している。多くの場面は、第1部を通じて初めて意味を理解できる細かな伏線となっている。デンジは人間の感情交流や常識的な扱い方をほとんど知らない。本能と欲望に基づき行動し、思考も単純かつ低俗なものに偏っているため、マキマに初めて会った際の大きな抱擁は、彼がこれまで経験したことのない感覚だったのだ」とした。
その上で、「デンジは理性ではマキマに忠誠を誓うが、雨の中で出会ったレゼからの誘惑や日々の交流を通じてデンジは完全に心を奪われる。レゼが読み書きや泳ぎを教え、共にコーヒーを飲み、学校や祭りを探索するなど、デンジに新しい世界を次々と開かせた。デンジが経験したことのない繋がりと彼女の明るく受容的な態度が空虚な心と愛への渇望を満たしたのである。レゼが『爆弾の悪魔』と設定されているのは非常に面白い。魚雷のような頭部、本来の身体はしなやかで、爆薬のスカートを身にまとい、致命的な魅力と危険性に満ちている。彼女はソ連から派遣された人体実験の兵器であり、通常なら感情を持たないはずだったが、デンジと初めて出会った際に心を動かされたのだろう」と述べた。
そして、「レゼはデンジが16歳で教育を受けず、デビルハンターとして生きる異常な生活から抜けるべきだと何度も伝える。これはデンジにチェンソーの能力を捨てさせようとしているようにも見えるが、多くのセリフには真心が込められており、彼女自身が永遠に戦うしかないことに縛られ、苦痛を感じていたことへの自己投影でもあったのだろう。レゼは自分が爆弾兵器であることを自覚しているにもかかわらず、心の底からデンジを傷つけたくない、彼に生き延びてほしいと願っていた。しかしデンジが都会のネズミになることを選んだことにより、レゼはためらいを覚え、最終的には死闘もあり得る状況となる。乱戦後、デンジはレゼから恩恵を受けていると感じたため、彼女を殺さずに駆け落ちすることを決めた。この場面でデンジは、自分のために犠牲になった仲間や、大きな危害の可能性を考慮しなかった。まるで子どもが母親にだけ服従するような愛の理解をしたことが示されている」と論じた。
一方、「マキマは神秘的で、平静沈着かつ深遠な人物で、すべてを統べる強大な存在感を放つ。観客は物語を通じて、マキマには対抗者が存在せず、彼女に異次元の力があることを認識する。彼女は部下に細心の注意を払い、チェンソーマンを特別に保護し、まるで神のように全知全能の視点を持つ。第一部の後半でマキマの正体が明らかになるが、レゼのかわいらしい誘惑とは対照的に、作中のマキマはデンジを全く眼中に置かず、チェンソーの力のみを重視する。この対比が物語に緊張感と深みを与えている」と評した。
そして、「『チェンソーマン』は藤本氏の独自性を余すことなく表現し、人間性のブラックユーモアを描く物語だ。B級映画のような荒唐さや感情への衝撃を与える技量は1級品である。また同作の表層下にある物語を深く掘り下げると、社会への皮肉や生存についての思索が多く含まれていることが分かる。『チェンソーマン』に一度も触れたことがないなら、特にお薦めはしない。過激で血生臭く、家族向けの作品ではないからだ。ただ、もしテレビアニメを見たことがあるなら、原作漫画を通じて藤本氏の力量を感じ、劇場で鑑賞することを強く推奨する。レゼ篇があなたの心を奪うことは間違いないだろう」と結んだ。(翻訳・編集/岩田)
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