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27日、台湾のポータルサイト・vocusに劇場版「チェンソーマン レゼ篇」のレビュー記事が掲載された。写真はチェンソーマン。
2025年9月27日、台湾のポータルサイト・vocusに劇場版「チェンソーマン レゼ篇」のレビュー記事が掲載された。(本記事はネタバレを含みます)
記事はまず、「原作者・藤本タツキ氏のファンである筆者にとって、同作は自分の好みにぴったりの最高な作品であった。日常生活や男女の恋愛、あるいは血飛沫が飛び散る虐殺でさえもが、軽快なテンポで面白おかしく描かれている。吉原達矢監督は、原作漫画を読む時に読者が味わうB級映画的な感覚を完全に捉えていた。序盤で主人公デンジ(声優・戸谷菊之介)が2人の女性の間で揺れ動くくだりは、まるで『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』のようなパロディー調のラブコメディーとして表現され、デンジの純情な妄想が可愛らしくも滑稽に描かれていた」と述べた。
続けて、「制作チームが描く、簡潔な線の輪郭や色鉛筆のような質感を持つ鮮やかで柔らかな色彩、そして生き生きとしたキャラクターの動きは、レゼ(声優・上田麗奈)の明るさとマキマ(声優・楠木ともり)の底知れなさを強く印象づける。そして、われわれもデンジと同じように知らず知らずのうちに彼女たちを好きになり、作品全体の賑やかさを味わったあとで、この物語に潜む深い残酷さを実感することになる」と言及した。
また、「アクションシーンはさらに圧巻である。同作の戦闘描写は制作会社・MAPPAの総力を注ぎ込んだかのように激烈で、カメラは狂ったように飛び回り、キャラクターたちは都市を縦横無尽に駆け巡った。その傍らでは、絶え間ない爆発や土煙、巨大な怪物が建物を破壊する光景が繰り広げられたほか、突然遠景に切り替えて場面のスケールを見せる演出には、劇場版ならではの迫力があった」と振り返った。
さらに、「この一連の狂気じみた映像の大部分は手描きで制作され、混乱の中でも作画の精密さは失われず、作品の荒々しさやスピード感が表現された。一般の観客にはやや目まぐるしく感じられるかもしれないが、ヘビーなアニメファンにとっては、まさに目が追いつかないほどの視覚的饗宴だ。筆者も厳しい目で鑑賞したが、同作は序盤の演出で期待に十分応えてくれただけでなく、アクションシーンは想像を超える衝撃を与えてくれた。このような幸福感は、日本のアニメにハマって以来、テレビアニメでも劇場版でもめったに体験できなかったものである」と評した。
記事は、「同作は冒頭の漫画風のモノクロ演出で『藤本作品』への原点回帰を示した。光と影を活かしたシーンは、単なる『映画的表現』ではなく物語に寄り添う映像美として機能し、随所には原作ファンを喜ばせる粋な工夫も散りばめられた。こうした演出が藤本作品の野性味や破天荒さを際立たせている」とした。
その上で、「原作ファンはよく藤本作品の特徴を『狂気と戯画』と言うがそれだけではない。特に表面上の『真剣になったら負け』というシニカルな演出の裏に、純真で善良な人間が残酷な世界に対して抱く無力感が見て取れる。例えば、なぜデンジはどうしようもなくマキマやレゼに夢中になってしまうのか?その一つ目の理由は、幼い頃から厄介者のように扱われてきた彼が、それまで異性にここまで優しくされた経験がほとんどなかったからであろう」と述べた。
また、「二つ目の理由は、デンジの生活には目の前で自分に優しくしてくれる数人の異性を除けば、将来に希望がほとんど存在しないからである。公安にいることで食事や住まいは確保され、デンジ自身も満足はしているが、現時点ではそれは最低限の生存を満たしているにすぎない。マキマやレゼは、彼にとって数少ない『明日を待ち望める存在』なのである。物語の中では、バカなデンジがこうした『低次元の欲求』に突き動かされてドタバタを繰り広げていくが、このキャラクターが抱える『欠乏』は、現実社会の下層階級が直面する困窮や抜け出せない境遇を映し出している」と考察した。
それから、「気づかされるのは、同作のヒロインであるレゼもまたデンジと同じく、すべてを奪われ、何も持たない存在であることだ。さらに2人とも利用され、いつでも捨てられる道具や実験動物のように扱われている。つまり同作は、操られた2人の底辺のを生きる2人が、理由も分からないまま殺し合いをさせられる物語なのである」と指摘した。
そして、「たとえ2人が最後一緒にこの状況から逃げ出そうとしても、そのかすかな夢は容赦なく打ち砕かれる。自分は大事な存在だと思っていても、実際には何の価値もなく、人生も夢も真実の愛も、すべてくだらないものにすぎない。ボム(レゼ)の前では皆ただの捨て駒だが、より強大な国家権力を前にすれば、ボム自身もまた捨て駒にすぎないのではないか。もし先に述べた悪ふざけが藤本作品の醍醐味だとすれば、その悪ふざけの裏に潜む深い悲哀こそが、『チェンソーマン』という作品における真の核心であり、最も見事な真髄なのだろう」と論じた。
記事は、唯一不満だった点として「原作で印象的だった『排水口の渦』を介した台風の悪魔とのコミュニケーションが再現されていなかったこと」を挙げ、「渦は『水流=気旋』という巧みな対応関係を示していたのに、同作ではただ排水口に向かって話すだけにとどまっていた」と述べた。(翻訳・編集/岩田)
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