中国の輸出規制受け世界各地でレアアース磁石生産の動き、前途は多難―米メディア

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中国は約6カ月前に世界の多くの産業が依存するレアアース磁石の輸出を厳しく制限するようになった。世界各地でレアアース磁石を製造する動きが急速に進んでいるが、現実問題として「前途多難」という。資料写真。

中国は約6カ月前に世界の多くの産業が依存している強力なレアアース磁石の輸出を停止した。その後、一部のレアアース関連品の輸出は認められたが、現在ではより厳格な管理が行われるようになったという。このことで、世界各地でレアアース磁石を生産する動きが急速に進むようになった。しかし、現実問題としては「前途多難」という。米国メディアのニューヨーク・タイムズが伝えた。

中国はレアアース磁石の供給を握ることで、米国のトランプ大統領やEUとの貿易交渉において交渉材料を得た。トランプ大統領は対中関税の引き上げについてインドやブラジルなどに比べて慎重な姿勢を示すようになった。中国はまた、欧州向けのレアアース磁石の輸出を制限し、EUに対して中国製電気自動車(EV)への関税を再考させようとしている。

中国からのレアアース磁石の入手が困難になったことを受け、世界各地でレアアース磁石を生産する動きが急速に進行するようになった。カナダに本社を置くネオ・パフォーマンス・マテリアルズ(以下、ネオ社)は9月中旬に、エストニア国内に設立した工場の稼働を開始した。このことで、欧州と米国の磁石生産能力は一挙にほぼ倍増した。ネオ社はさらに多数の設備を導入し、今後数年でこの工場の生産量を倍以上に引き上げる計画だ。

北米と欧州は毎年、自動車、ロボット、ドローンその他の製品向けに約4万トンのレアアース磁石を調達しており、そのほぼすべてが中国からの輸入だ。

アジア以外の国々によるレアアース磁石の年間生産量は2000トンに満たず、主にドイツとフィンランドで製造されている。さらに、日本企業は日本とベトナムで年間2万5000トンを生産しており、日本と韓国の自動車メーカーに多くを供給している。

一方で、中国では年間20万トン以上のレアアース磁石が生産される。多くは中国国内の工場でモーターやその他の機器に組み込まれ、中国の膨大な製品輸出の一部として世界中に流通している。

ドイツのVACグループは欧州の主要なレアアース磁石メーカーであり、同社のエリック・エッシェンは、10月に米国サウスカロライナ州サムターで年産能力約2000トンの工場を稼働させる予定と述べた。エッシェンCEOはさらに、サムターの工場ではドイツのVAC工場で18カ月間の研修を受けた米国人スタッフを起用し、来年3月末までにサウスカロライナ州工場のフル稼働を目指すと説明した。同工場の生産能力は18カ月以内にほぼ倍増する可能性があるという。

米国国内ではそれ以外にも、レアアース磁石を製造する工場を開設したり、製造量を急拡大させようとする動きが多くある。しかし業界では、それらはすべて楽観的な見通しに過ぎないと指摘する声がある。レアアース磁石工場の操業は、建設よりもはるかに困難であり、全面的な稼働には最大3年を要する場合がある。さらに、レアアース磁石の品質基準は極めて厳しく、経験豊富な技術者が必要とされるからだ。

また、1つの工場は、数十種類の異なるタイプのレアアース磁石を製造する能力を備えていなければならない。エンジン車の場合、座席、ブレーキ、サイドミラーなどのシステムに搭載されるモーターには、40個以上のレアアース磁石が使われることがあり、1個あたりの重量は10グラム未満であることが多い。電気自動車ではさらに多くの磁石が必要だ。

中国が磁石分野で圧倒的な優位を保っている理由の一つは、レアアース鉱石の精錬工程をほぼ完全に掌握している点にある。耐熱磁石の製造に使用される3種類の主要なレアアース元素のうち、世界の99%以上が中国の精錬所で生産されている。米国をはじめとする多くの国々は、長年にわたり自国の鉱山で採掘した鉱石も中国に送って精錬してきた。

また、世界のレアアース精錬設備の大多数は中国製であり、中国はこの種の設備の輸出を制限し始めている。レアアース精錬に従事する技術者のほとんどは中国人で、中国政府は最近、これらの技術者の大半に対して海外渡航を禁止した。ブラジルでレアアース鉱山を開発しているアクララ・リソースのラモン・バルア・コスタCEOは、「中国以外で関連技術者を見つけるのは非常に困難です」と述べた。

中国のレアアース磁石への依存から脱却しようとする企業や国にとって、Neo社がエストニア最東部で展開する事業は極めて重要だ。一方でNeo社が新たに磁石工場を建設したナルヴァは、ロシア領内に入り込む湾状の河川地帯に位置している。

エストニアはEUに加盟しており、ウクライナ問題でロシアとEUが対立を深める現状では、レアアース磁石の生産場所としてナルヴァは理想的とは言えない。ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻から4カ月後、ナルヴァがロシアにとって戦略的に重要と強調した。

Neo社がナルヴァに新設した磁石工場の初期段階での年産能力は2000トンであり、工場内の一部設備は5000トンの生産能力を前提に作られた。しかし同社のラヒム・スールマンCEOは、レアアース磁石は製造工程が複雑であるため、生産能力を2000トンに引き上げるだけでも3年かかる可能性があると述べた。スールマンCEOは、この目標をさらに早く達成できる企業は存在しないとの考えを示した。

スールマンCEOは、レアアース磁石の製造について「もし以前にやったことがなければ、その仕組みはまったく理解できないだろう」と述べた。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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