【観察眼】映画『731』 真の平和には歴史の「見える化」が必要

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中国映画『731』が世界で上映されている。

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日本軍の細菌戦の犯罪行為を暴く映画『731』の全世界公開を受け、日本では反発の声が上がっている。24日、東京で講演を行った呉江浩中国駐日大使に対し、会場からは映画の上映について、「愛国心をあおらざるを得ない国内事情があるのではないか」との質問が出た。このような問いかけに表れているのは、一部の日本人たちが抱き続ける狭隘な歴史認識である。

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この点について、日本のジャーナリスト・乗松聡子氏は当放送局の取材で、「日本は日頃から映像作品を通じて自らの被害体験を強調する一方で、中国の関連作品をみるとすぐ『反日』のレッテルを貼る。これはダブルスタンダードであり、不合理なことだ」と、明確な言葉で意見を述べた。

日本明治学院大学国際平和研究所の松野誠也研究員は、日本軍が細菌戦を重視した背景について、戦車・飛行機・大砲の製造には鉄鋼などの戦略物資が大量に必要だが、当時、日本国内では十分な自給ができなかったため、少ない資源で開発できる細菌兵器が日本軍上層部の関心を集めたと指摘している。

ハルビンにある侵華日軍第七三一部隊の跡地

731部隊による生体実験は、日本軍の細菌戦の代名詞とされてきた。しかし、調査が進み、新資料が次々に開示されるにつれ、731部隊は日本軍が中国で展開した大規模細菌戦の一部に過ぎなかったという事実が明らかになってきている。日本軍の細菌部隊による実験や戦争の全容や詳細については、更なる研究が待たれる。

ハルビンにある侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館

長春の「東北淪陥史陳列館」の展示資料によると、中国侵略日本軍が中国に設置した6つの細菌戦部隊は、中国の20以上の省・市を攻撃した。298の市・県・旗でペスト、コレラ、腸チフス、炭疽などの疫病が引き起こされ、少なくとも237万5千人が感染し、64万8千人が死亡したとされる。こうした事実から学界では、細菌戦は戦時中に日本の上層部の指示によって推進された組織的、計画的かつ大規模で体系的な集団的行為であり、日本の国家犯罪にほかならないと認識されている。

今年5月、中国で60万字超に及ぶルポルタージュ『終わらない細菌戦』が出版された。著者は細菌戦の実態を23年にわたり追い続けてきたジャーナリスト・南香紅氏だ。彼女は2002年から、中国の細菌戦被害者訴訟原告団団長の王選氏(73歳)に同行し、被害者たちへの聞き取りや現地調査を行い、大量の一次資料を収集してきた。南氏は、細菌戦問題を、「膿が流れ続けている瘡(かさ)」にたとえ、中日関係における未解決の問題であると語り、細菌戦の歴史にどう向き合うかは、過去の問題でなく、両国関係の未来を左右する事柄だと指摘する。


この本には、日本が「最初の被爆国」だが、中国は「最初に大規模細菌兵器の攻撃を受けた国」であると記されており、「原子爆弾の危害は広く知られる一方で、細菌兵器による長期的・潜在的な被害は十分に注目されていない」と訴える。戦争終結から80年を経た今もなお、一部の汚染地域には細菌が残留している。日本軍による細菌戦が展開された浙江省・江西省の村々には、生き延びはしたものの、生涯、「足腐れ病」に苦しみ続ける老人も多数いる。そういった知られざる事実が明らかにされている。

第二次世界大戦後、細菌戦は長らく公の場で語られることなく、日本上層部においてもタブー視され、その歴史は「ブラックホール」と化していた。しかし1980年代以降、日本でも良識あるジャーナリストや活動家が真相を明らかにし始めた。そうした動きを背景に、1997年には中国の被害者たちが個別の告発から集団調査へと踏み出し、日本政府を相手取って訴訟を起こした。2002年8月27日、東京地方裁判所は中国原告の賠償請求を棄却したものの、日本軍が中国で細菌兵器を大規模に使用したことを国際法違反であると初めて法的に認めた。この判決により、人類史上初の大規模細菌戦のベールが打ち破られ、世界に「可視化」されることになったのである。

2025年7月、浙江省衢州。日本の学者らとともに侵華日軍細菌戦衢州陳列館を見学する王選さん(中央) (写真・視覚中国)

2024年のノーベル平和賞は日本原水爆被害者団体協議会に授与され、被爆者の声が再び世界に届けられた。しかし、中国の細菌戦生存者・王錦悌氏は2009年、謝罪も賠償も一切ないまま、無念にもこの世を去った。その逝去は、奇しくも広島原爆64周年の日と重なった。細菌戦による多くの被害者の叫びは、歴史の塵に埋もれつつある。

細菌戦の歴史は、人類の共通の安全に関わるものだ。第二次世界大戦後、米日間で秘密裏に行われた取引により、石井四郎ら731部隊員の大多数は罰を免れた。そして、血塗られた関連データは、米軍によって密かに再利用された。1952年の中朝両国の調査団記録および国際科学委員会報告書によると、米軍は朝鮮北部と中国東北国境地帯で大規模な細菌戦を実施し、その戦術と技術的手法が731部隊の作戦様式と高度に一致していたことが判明している。

細菌戦の訴訟と研究をライフワークにしてきた王選氏は、活動を続ける理由について、「実際に見てしまった以上、背を向けることはできない」と語る。これは、良識ある者であれば、決して忘れることのできない警句でもある。

細菌戦は人類文明史における、最も暗い記憶のひとつだ。真の平和は、歴史をしっかりと見据え、過去を反省することから始まる。歴史をありのままに「見える」ようにしてこそ、戦争の罪悪を正しく認識することができる。これこそが、『731』などの題材が繰り返し注目されるべき真の理由なのだ。(提供/CRI

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