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中国では調理済み食品業界が急速に発展しているが、「調理済み食品」の定義の曖昧さ、認識の不十分さ、消費者との認識のギャップといった複合的な問題が存在する。
中国では最近になり、飲食店チェーン展開大手の西貝餐飲が、調理済み食品を使用しているにもかかわらず「その場で炒めた」と宣伝したことが問題になったことをきっかけに、調理済み食品業界の基準と監督体制に対する広範な議論が発生した。この議論の背後には、中国の調理済み食品業界が急速に発展する中で直面している定義の曖昧さ、認識の不十分さ、消費者との認識のギャップといった複合的な問題が存在する。中国メディアの第一財経が伝えた。
中国では、食品の安全性その他の品質を確保する体系が確立されている。食品についての標準体系の構築は1963年に始まり、60年以上が経過した。2009年の「食品安全法」施行に伴い、それまでの「食品衛生」の概念が「食の安全」へと移行し、標準体系は全面的な統合段階に入った。12年からは食品標準の全面的な整理統合が始まり、さまざまな基準で重複や矛盾が存在する問題を解決してきた。中国における有効な食品の国家標準は25年時点で2242項目に達し、食品の安全だけでなく、品質、検査方法、表示規範、栄養強化剤など多くの分野を網羅する食品の統一標準体系が構築された。
標準制定に携わる専門家の一人は「すべての調理済み食品にはそれぞれの品目に対応する標準があります。たとえば、包子(肉まん)には冷凍小麦粉製品、チャーハンには米製品、紅焼肉(豚肉のしょうゆ味煮込み)には肉製品調理の標準があります」と説明した。つまり、その制定という立場からすれば、「調理済み食品」という対象があるのではなく、個別の食品についてそれぞれ適用する標準が存在する。仮に「調理済み食品についての標準」を制定しようとすれば、既存の標準の調整など極めて難しい作業が発生して「次に何をすべきか、だれにも分からない」状態になってしまうという。
同専門家よると、現行の標準体系は、実際には各種の調理済み食品の安全について原材料から製品までの各段階をすでに網羅している。調理済み食品の標準を考える上で難しいのは標準そのものについてではなく、「調理済み食品とは何ぞや」という概念だという。調理済み食品の定義あるいは範囲については、いまだに統一された明確な共通認識が存在せず、業界専門家、企業、消費者など異なる集団によって理解に大きな差がある。
調理済み食品には洗浄して切り分け済みの野菜、半製品の料理、すぐに加熱して食べられる缶詰や冷凍食品など多様な形態が含まれるべきとして、調理済み食品全体に適用される標準を創設すべきと考える人もいれば、これらの製品についてはすでに、既存の食品分類体系、たとえば惣菜、冷凍食品、缶詰などに対応する標準があるため、調理済み食品という分類を新たに創設する必要はないとする反対意見もある。つまり、「調理済み食品」を独立した食品分類と見なすべきか、それとも現行の標準体系に組み込んで管理すべきかが最初の争点だ。
同専門家はさらに「最近の調理済み食品をめぐる論争も、以前の学校給食における調理済み食品論争も、いずれもその発端は期待と現実のギャップにありました」と指摘した。
消費者がギャップや不安を感じる原因の多くは科学的知識の欠如にある。同専門家は「調理済み食品は急速冷凍や真空包装などの技術を通じて、実際には食材の栄養をより良く保持することができます。さらに、わが国の食品添加物標準は多くの国の標準よりも厳格ですが、一般の人々はこれをほとんど知らず、24カ月保存可能な冷凍ブロッコリーにさえ(防腐剤を使っているのかなどの)疑念を抱きます」と説明した。
また、調理済み食品を製造する技術は、「環境負荷の少ない食の世界」の構築にも貢献している。ある食品供給チェーンの研究者は、「調理済み食品の本質は、食品工業と外食産業の融合です。農産物に対して標準化かつ工業化された前処理を施すことで、廃棄を減らして効率を高めることができます。これは世界での発展の方向性です。畑の近くに工場を建設すれば、現地で加工することで輸送による損耗や食材の浪費を減らすこともできます。環境保護と効率の観点から、調理済み食品には明らかな利点があります」と説明した。
中国政府が発表した23年の中央1号文書は、調理済み食品産業の発展を明確に奨励し、食品廃棄の削減、原材料の利用率向上、品質の安定化における調理済み食品の積極的な役割を強調した。また調理済み食品産業はすでに急速な成長期に入り、24年には市場規模が4850億元(約10兆円)に達したとされる。
前出の標準制定に携わる専門家は、「調理済み食品の健全な発展」を実現するには、政府、企業、消費者の三者が共同で努力する必要があると指摘した。「政府は標準体系をさらに整備することができますが、『標準のための標準』に陥ることは避けるべきです。企業側は自律性を強化し、調理済み食品の使用状況を明確に表示し、研究開発への投資を増やし、製品の品質を向上させ、消費者とのコミュニケーションを強化し、調理済み食品に関する知識を普及させるべきです。消費者は食品標準に対する認識を高め、識別能力を強化する必要があります」という。
同専門家はさらに、「調理済み食品における困難を解決する鍵は信頼の再構築にあります」と指摘した。現状では多くの消費者が調理済み食品に疑問を示すが、缶詰や冷凍食品など「伝統的調理済み食品に不安を感じる人は、それほど多くない状況になった。今後は政府、企業、消費者の三者が良好な相互作用を形成してこそ、調理済み食品業界は現在の困難を脱し、高い品質を保ち真の発展を実現することができるのであり、将来は技術の進歩と標準の整備が進むにつれ、消費者は「疑うことなく調理済み食品を受け入れるようになり、調理済み食品は最終的に現代の食生活に欠かせない存在」になることが期待できるという。(翻訳・編集/如月隼人)
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