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中国の鉄道切符が10月から電子版に統一される。
中国の鉄道システムがまた一つ大きなデジタル変革の節目を迎える。長年親しまれてきた紙の鉄道切符(報銷憑証:精算用の領収書)が9月30日をもってその歴史に幕を下ろし、翌10月1日からは全面的にデジタル化された電子発票(電子請求書)に統一される。
中国国鉄は旅客サービスの効率化と利便性向上を目指し、かねてより切符の電子化を推進してきた。そのプロセスは以下の通り。
1. 試験導入(2018年)
2018年11月、海南環島高速鉄道において、乗車券そのものを電子化する「電子客票(eチケット)」制度が試験的に導入された。これにより、乗客は身分証明書を提示するだけで改札を通過できるようになった。
2. 全国展開(2020年)
試験導入の成功を受け、2020年6月までには全国の高速鉄道および一般速度鉄道でeチケットが全面的に普及。この時点で、従来の紙の切符は乗車証明としての役割を終え、「僅供報銷使用(精算目的のみに使用)」と印字される精算証憑へとその位置づけを変えた。
3. 電子発票への移行(2024~2025年)
そして最終段階として、2024年11月1日より、精算証憑そのものを電子化する「電子発票」制度が導入された。2025年9月30日までの1年間は、紙の証憑と電子発票を選択できる移行期間が設けられているが、それ以降は電子発票に完全に一本化される。
電子発票への移行に伴い、旅客および企業内での経理プロセスも変化する。電子発票の取得は公式プラットフォーム「鉄道12306」のウェブサイトまたはモバイルアプリを通じて行う。
「鉄道12306」のアカウントにログインし、「電子発票」メニューから発行対象となる乗車履歴を選択し、発行先の企業名や納税者識別番号などの必要情報を入力して申請する。
発行された電子発票はPDFまたはOFD形式でダウンロードでき、メールでの送信も可能。これにより、従来のように駅の窓口や自動券売機で紙の証憑を印刷する手間が完全に不要となる。
主な留意点は以下の通り。
■申請期限
電子発票は乗車日またはキャンセル・変更手数料の支払い日から180日以内に申請する必要がある。
■本人限定
発行は本人の乗車分に限られ、代理での発行は認められていない。
■再発行
入力情報に誤りがあった場合や運行中止などにより旅程が変更された場合は、期限内に一度だけ再発行が可能。
この完全電子化がもたらす影響は業務効率化にとどまらない。
■環境保護への貢献
2023年の中国鉄道旅客輸送量は延べ36億8000万人に達した。仮に1枚10gの紙を消費すると仮定すれば、年間約3万6800トンの紙資源とそれに伴う膨大な数の樹木が節約される計算になる。
■ガバナンスの強化
電子発票システムは税務当局のシステムと直接連携しており、データの透明性と正確性を飛躍的に向上させる。これにより、不正な経費精算のリスクを大幅に低減させることが可能となる。
■生産性向上
電子データは物理的な保管スペースを必要とせず、検索や管理も容易だ。紛失や破損のリスクから解放されることで、企業経理の効率化はもちろん、個人にとっても時間的・心理的コストの削減につながる。
紙の鉄道切符からeチケットへ、そして紙の精算証憑から電子発票へ。この一連の変革は、中国が国を挙げて推進するデジタル化の潮流を明確に示している。
もちろん、高齢者などデジタル機器に不慣れな層への配慮は不可欠であり、鉄道部門は乗車情報を印刷できる「行程情報単」の提供を継続するなど、丁寧なサポートを続ける方針だ。
一つの時代の象徴だった紙の切符が姿を消すことに一抹の寂しさを覚える声もあるが、それを上回る利便性と社会的な便益が新しい時代の到来を力強く後押ししている。
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