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快適性を左右する見えない空のリスクは航空業界と旅行者双方に新たな示唆を投げかけている。
この夏を象徴する酷暑と線状降水帯は、地上では水害を、上空では乱気流をもたらした。安全は揺るがないが、快適性を左右する見えない空のリスクは航空業界と旅行者双方に新たな示唆を投げかけている。
今年の夏、日本列島は連日の酷暑に覆われた。天気予報では「線状降水帯」という言葉が頻繁に飛び交い、市街地を襲う局地的大雨が社会を混乱させた。線状降水帯は積乱雲が帯状に連なって発生する気象現象で、長時間にわたり同じ地域に豪雨をもたらす。
その破壊力は水害という形で地上を直撃するが、航空にとっても無関係ではない。積乱雲がもたらす強い上昇気流や下降気流は、空域において乱気流を誘発し、機体の揺れを増幅させる要因となるからだ。
現代の航空機は乱気流に耐えられる設計となっており、通常運航に直接の支障を与えることはほとんどない。墜落や重大な損傷を招く危険性は極めて低いと言えるだろう。しかし、機体が突如大きく揺れる経験は、乗客にとって恐怖や不快感を呼び起こす。シートベルト着用中であれば大きな問題にはならないが、客室乗務員の作業やサービスの中断につながり、快適な空の旅を損なう要因となる。
特に近年は、地球温暖化が進行することで晴天乱気流(CAT)が増加傾向にあるとの研究も相次いでいる。空の安全性は確保されつつも、航空会社が「顧客体験の質」として乱気流をどう捉えるかが新たな課題となりつつある。
こうした乱気流リスクを可視化したユニークな調査として、航空気象データを扱うTurbliが発表する「Most Turbulent Routes and Airports」がある。2024年版のデータでは、世界で最も揺れる航路として南米アンデス山脈を越えるメンドーサ—サンティアゴ線が平均EDR24.68で首位に立った。山岳地帯や海峡を横断する路線が上位に並び、いずれも強風や地形による気流の乱れが乱気流を頻発させる空域であることが背景となっている。
ここで注目すべきは、中国の高原路線が堂々とランキングに顔を出している点だ。成都-ラサ、成都-西寧といったチベット高原を経由する路線は、地形的要因から常に強い気流変動にさらされており、アジアにおける乱気流多発地域として国際的に認知されている。
では、日本の空はどうか。これまでの研究では、北太平洋航路の成田-北米線を中心に晴天乱気流の発生が観測されてきた。特に秋季においては、北緯45~65度に乱気流が増加する傾向が報告されている。
また、羽田や成田など大都市空港でも、線状降水帯の影響による雷雨や視界不良が離発着を妨げる事例が見られ、ダイバート(目的地変更)を余儀なくされるケースも出ている。日本の空港や航路は世界ランキングには名を連ねていないものの、気候変動の進行に伴い、乱気流のリスクが高まる可能性は否定できない。
乱気流は航空機の安全性そのものを揺るがすものではないが、旅行体験や航空会社のサービス評価に直結する要素だ。航空会社は最新の気象データやAI予測を導入し、快適性維持のための投資を強化している。旅行者にとっても、乱気流予測サイトやランキングデータを活用し、空のリスクを理解することは有益だ。酷暑や線状降水帯がもたらす「揺れる空」は、航空業界にとって新たな差別化の舞台となり、ビジネスとしての機会と課題を同時に提示している。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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