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中国の小売大手・胖東来が刑罰を終えて釈放された人の採用枠を新設し、大きな議論を呼んでいる。写真は胖東来。
人は一度過ちを犯したら社会復帰は困難なのか。そんな問いを巡り、中国と日本で注目すべき動きがあった。中国の小売大手・胖東来(パンドンライ)が刑罰を終えて釈放された人の採用枠を新設し、大きな議論を呼んでいる。一方、日本では7月の参議院選挙で服役経験者が東京選挙区から立候補し、再犯防止や社会復帰支援の強化を訴えた。
胖東来は河南省許昌市を本拠とし、許昌や新郷などで店舗を展開する小売企業だ。創業者の于東来(ユー・ドンライ)氏は10日、SNSの微博(ウェイボー)で、刑罰を終えて釈放された人を採用する方針を発表した。初回は約20人の受け入れから始め、将来的には中・重度の経歴を持つ人にも段階的に枠を広げる計画だ。
于氏は「刑期を終えた人はすでに法的に平等な公民であり、社会は差別や偏見ではなく、尊厳と機会を与えるべきだ」と強調。これまで採用が敬遠されてきた層に対し、企業としてリスクを引き受けながら社会包摂(ソーシャル・インクルージョン)を実践する姿勢を示した。
同社は2025年1~7月に累計売上133億8600万元(約2677億2000万円)、24年には年間売上約170億元(約3400億円)、利益8億元(約160億円)超を記録しており、安定した経営基盤がこうした社会的チャレンジを下支えしている。
海を隔てた日本では、れいわ新選組(代表:山本太郎議員)が7月の参議院選挙・東京選挙区で、元衆議院議員で服役経験のある山本ジョージ(譲司)氏を擁立した。同党は19年参院選で木村英子氏(脊髄性筋萎縮症)と舩後靖彦氏(ALS)の当選を実現するなど、包摂的な政治の実績を積み重ねてきた。
山本ジョージ氏は選挙戦で、刑務所での福祉や更生支援の現場体験を政策に反映させ、再犯防止や社会復帰支援の充実を訴えたが、結果は落選となった。選挙活動期の報道が他党の著名候補に集中したことや、一部の争点が過度に注目を集めたことなどにより、訴えが有権者に十分浸透しなかったとの見方がある。
本稿で取り上げたのは、中国の企業施策と日本の国政選挙という異なる舞台における話題だが、「過去を理由に社会から排除されがちな人々に再出発の機会を与える」という課題意識は共通している。中国では企業が服役経験者の採用を公に打ち出す例は依然としてまれだ。
一方の日本には、刑務所出所者や少年院出院者の更生・社会復帰を官民協働で支援する「職親プロジェクト」があるほか、法務省・厚労省に登録された「協力雇用主」制度も存在する。協力雇用主については、自治体によっては公共調達(入札)で加点などの優遇を受けられる場合がある。とはいえ、参議院選挙の結果や露出状況を見るかぎり、こうした制度への社会的関心もまだ十分なものとは言いがたい。
欧米では「Ban the Box(採用時に犯罪歴の申告欄を設けない)」運動が広がり、企業の実務に影響を与えている。北欧諸国では更生支援と社会復帰プログラムを制度的に整備し、再犯率の低下に資する取り組みが進む。
「一度の過ちで全てを失わせる」のではなく、「やり直しができる社会」を築く。その実現には、制度・政策の整備に加え、人々の意識の変化と関心の高まりが欠かせない。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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