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浙江省安吉県は全国初の県レベルの竹林カーボンクレジット取引プラットフォームを設立するとともに、中国における竹産業イノベーションセンターの建設を加速させている。
8月のある日の早朝。中国南東部の浙江省安吉県の朝市を訪れると、「以竹代塑(竹をプラスチック代わりに)」と印字されたレジ袋を手にした人の姿が多く見られた。竹工芸品の端材を利用して作られ、土の中で生分解する環境にやさしいこのレジ袋は、県内21カ所の市場で広く使われている。
現在、安吉県は全国初の県レベルの竹林カーボンクレジット取引プラットフォームを設立するとともに、中国における竹産業イノベーションセンターの建設を加速させている。竹林が生み出すカーボンクレジットは、年間2800万元(約5億7500万円)以上の収益を地元の竹農家にもたらす新たな収入源となっている。
この革新的な富の創出を支えるのは、中国の発展モデルを根本から変えた理念だ。20年前、「緑水青山就是金山銀山(澄んだ水と青い山こそが金山であり銀山である)」という環境保護の理念がこの地で初めて打ち出された。現在、安吉県は竹産業の発展を通じて、環境保護は経済発展の制約ではなく、明るい未来を切り開く力であることを証明している。
安吉県の変貌は象徴的だ。2005年まで、この地域は山を切り崩して石材を採取する「石の経済」に依存し、年間300万元(約6100万円)の利益をもたらしたものの、粉じんが空を覆い、渓流は濁流と化していた。その後、長年にわたる環境修復と農業・文化産業・観光業の融合により、かつての石材の町は、中国で初めて、経済・社会の発展と生態系保護とが調和した「生態県」へと生まれ変わった。県内総生産は約89億9600万元(約1850億円)から約675億5700万元(約1兆3900億円)へと大きく成長し、「石を売る町」から「空気を売る町」へと産業構造の転換を果たした。
このような成功例は中国各地で見られる。南西部の貴州省は、約47万ヘクタールの茶畑を基盤に、土壌の保護と生態環境の改善を両立させ、年間生産額は約970億元(約2兆円)に達する。また、南部の湖南省邵陽市の山間部で生産される「朱鷺(トキ)稲」と呼ばれる水稲は、厳格な生態管理で品質を高め、500グラム当たりの価格は一般のコメより3元(約61円)高い価格で取引され、農家の年間所得を平均20万元(約410万円)押し上げた。南東部の福建省三明市では、良好な生態環境を背景に、夏場は森が食料庫となり、セッコウやブルーゴールドなどの薬草が年間1億元(約20億5000万円)を上回る売上を生んでいる。これらの事例は、環境保護と経済発展は相反するものではなく、両立可能な課題であることを示している。
「澄んだ水と青い山こそが金山であり銀山である」という理念、いわゆる「両山理念」の強みは、西洋の近代化における「汚染してから浄化する」考え方や「環境問題での利己主義」といった価値観を超え、世界各国に発展と環境保護の両立という新たな道を示している点にある。これは、世界がグリーン・低炭素社会へのモデルチェンジを実現するうえでの確かな指針となっている。
アフリカでは、中国企業が南アフリカ最大級の再生可能エネルギー事業「レッドストーン太陽光発電所」を建設し、年間約480ギガワット時のクリーン電力を供給。約20万世帯の電力需要を満たし、化石燃料への依存を大幅に減らした。欧州では、中国とEU諸国がハイレベル対話やエネルギー転換、グリーン水素エネルギーなどのプロジェクトを通じて、低炭素で持続可能な発展を協同で推進している。アジアでは、中国が中国・ラオス鉄道の建設に電化技術を採用し、自然と調和する近代的な交通網を完成させた。ドイツ・ベルリン自由大学の学者で、EU委員会環境顧問を務めるベルトホルド・クーン(Berthold Kuhn)氏は、「この『両山理念』は、生態保護、気候行動、持続可能な成長といった多様な課題に対応し、世界の生態ガバナンスや国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に、中国の解決策を提供している」と評価した。
安吉県の竹林では、そよ風に揺れる竹一本一本が、新時代の経済物語を語っているかのようだ。西側諸国が依然として環境保護と経済発展のゼロサムゲームにとらわれている間に、この地の農家はすでにカーボンクレジットの価値を計算する技術を身につけた。責任転嫁や国際協定からの離脱を続ける国もある一方で、この中国の小さな町はすでに環境に優しいレジ袋から国際カーボン取引までをつなぐグリーン経済網を築き上げている。20年にわたる変革のなかで、安吉県は世界に向けてこう告げている。「澄んだ水と青い山」と「金山と銀山」は対立するものではなく、むしろ互いに補完し合う時代の答えなのだ、と。(提供/CRI)
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