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10日、シンガポールメディア・聯合早報は、低迷が続く中国の不動産市場に「再び春はやってくるのか」を考察する記事を掲載した。
2025年8月10日、シンガポールメディア・聯合早報は、低迷が続く中国の不動産市場に「再び春はやってくるのか」を考察する記事を掲載した。
記事は、中国の不動産業界の低迷が産業チェーンの深部にまで影響を及ぼしており、リストラや破産、絶望へと追いやられる人が後を絶たないと紹介。政策の方向性を転換しない限り、業界に第2の春はやってこないとした。
その上で、不動産業界の苦況を示す例として、広東省で塗装請負業を営む41歳の呉(ウー)さんのエピソードを紹介している。記事によると、20年の新型コロナに伴うロックダウンで呉さんの仕事は一時停滞したものの、ロックダウンが解除されると同市の不動産投資が過去最高水準にまで達し、塗装の注文が殺到して活況を呈したという。
しかし、この回復は不動産業にとって「最後の輝き」と言えるもので、中国政府による不動産企業の負債規制が強化され、恒大集団など大手が財務危機に陥った22年には受注が月50件ほどから数件にまで激減、市内に展開していた17店舗をすべて閉鎖し、100人いた従業員を10人以下にまで削減せざるを得なくなった。そして現在では少ない受注で細々と事業を継続しつつ、蓄えを民泊投資に回して利益を得ているとのことだ。
記事は、恒大集団や碧桂園など大手不動産企業の財務危機が引き起こした連鎖反応について言及。資金繰り悪化により多くの建設プロジェクトが工事中断や納期遅延に直面し、契約済みの住宅が完成せず、引き渡し不能になる案件が全国的に続出したと伝えたほか、呉さんの事例のように塗装や内装、家具といった装飾関連企業の受注も激減し、家具や建材のメーカー、物流業者なども含めて経営悪化が相次ぎ、倒産に追い込まれる事態になったと説明した。
さらに、業界の状況悪化は住宅価格の下落や引き渡しリスクの発生によって購入希望者の買い控え機運を生むという負のスパイラルをつくり上げたほか、建設労働者、販売員、関連業界の従業員の大規模な解雇や、地方政府の土地売却収入減少に伴う財政悪化まで引き起こしたと指摘。不動産関連の融資を積極的に行っていた金融機関の不良債権も膨らみ、投資家にまで損失が広がる可能性も懸念されていると伝えた。
また、具体的なデータとして、昨年1〜6月だけでリフォーム・内装業界の100社以上が破産・精算し、上海市の大手企業の倒産によって800以上の現場で内装工事がストップしたこと、広州市の企業では経営破たんにより創業者が自殺する悲劇も起きたことなどを紹介。建材・建設業界の状況はさらに深刻で、23年1〜11月には約2400社が倒産するなど、産業全体にわたる経営悪化が浮き彫りになったと評している。
記事は、業界の冷え込みが続く中でも中国政府が大手不動産企業の過剰債務を抑制するために、20年に導入した資産や自己資本、キャッシュに対する負債の比率が厳しく制限する「3つのレッドライン」政策を堅持していると紹介。また、住宅ローン金利や頭金比率の引き下げといった部分的な支援策は講じているものの、景気刺激や不動産市場の急回復を促すような大規模な緩和策を打ち出すことには慎重な姿勢を保っており、市場の構造調整が長期化することで業界全体の低迷からの脱却が難しくなっているとの見方が出ていると伝えた。
そして、中国政府の狙いが短期的かつ大規模な不動産業界の回復ではなく、不動産業界をこれまでの投機依存型・負債膨張型モデルから脱却させ、企業の財務基盤を健全化するとともに、経済全体を不動産依存から徐々に切り離すことにあると解説。その背景には。過去10年以上にわたり不動産が地方財政や雇用を支えてきた一方で、価格高騰や住宅在庫の過剰、家計負債の増大といった副作用が蓄積してきた現実があるとした。
その上で、専門家の間ではこのような慎重な政策運営によって中国の不動産市場には「第2の春」は訪れず、関連作業にも短期にとどまらない影響を与える可能性があるとの指摘が出る一方で、短期的な痛みを伴うことを許容してでも長期的に持続可能な市場環境を構築することが不可欠という中国政府の強い姿勢の表れでもあるとの分析もあることを伝えた。(編集・翻訳/川尻)
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