物販から体験販売へ、日系企業の対中投資が静かにサービス業へシフト

人民網日本語版    2025年8月7日(木) 13時30分
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日系企業の対中投資が静かにサービス業へシフトしている。

ここ数年、日本式の引っ越しが中国市場で徐々に人気を集めている。一部の日本企業は「引っ越しお任せサービス」の理念、つまり顧客は自分で荷造り、搬送、荷解をする必要がなく、すべての作業をプロの引っ越しチームが代わりにしてくれるという新しいサービスを中国に導入している。この理念は中国市場で徐々に認知され、中国に合わせた改良も徐々に加えられている。このサービスモデルの台頭は、中国の消費者の質の高い生活に対する追求に応えるだけでなく、サービス分野における日系企業の精密な管理とイノベーション能力を十分に示してもいる。さらにより深いレベル、さまざまな角度から、中国における日系企業の業態変革の進化の軌跡も映し出している。(著者:田正、中国社会科学院日本研究所副研究員。内容は一部省略)

日系企業は引き続き中国市場を楽観視

中国は14億人余りの人口を擁する超大規模市場で、中所得層が4億人を超え、消費市場の持続的な高度化・転換の流れが市場の可能性をより一層拡大している。ここ数年、中国政府は個人消費における量の拡大、質の向上、高度化の促進に力を入れており、個人消費を制約する顕在化した問題点を解決してきた。

中国政府はこのために一連の改革措置を推進し、ビジネス環境を絶えず最適化し、日系企業を含む世界企業の対中投資を積極的に誘致してきた。

地域別に見ると、2022年に地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が正式に発効したことは、日中間の投資のハードルを引き下げただけでなく、日系企業の対中直接投資のリスクとコストも引き下げ、日中経済貿易協力の質向上・高度化を推進している。

日系企業の対中直接投資は収益率が比較的高く、中国市場は日系企業がグローバル戦略を開拓し発展させるための重要な一環であり続けている。日系企業の対中直接投資の収益率は15年の12.1%から22年は18.4%に上昇し、米国の8.8%や英国の14.7%を大きく上回った。

そのため目下、地政学による経済面のリスクが増大しているが、日系企業は中国市場における投資チャンスを引き続き楽観視している。25年2月に中国日本商会が発表した会員企業の景況感とビジネス環境に対する認識に関するアンケート調査によると、日系企業の58%が「25年は対中直接投資を増やすか現状を維持する」と答えた。

同商会会長を務めるパナソニックホールディングスの本間哲郎副社長は、「パナソニックが中国市場で獲得した投資収益率は世界市場での平均水準を上回った。中国の日系企業にとって大きな魅力を持つ理由は、中国には強力で完備したサプライチェーンシステム、優れたイノベーション能力、豊富な技術開発人材、そして巨大な市場ポテンシャルといった優位性が備わるからだ」との見方を示した。

日系企業は中国での発展において、製造コストの高さ、マーケティング手法の遅れ、技術人材不足といった問題にも直面している。こうした問題が中国での事業展開の可能性を制約している。そこで日系企業はここ数年、中国での経営戦略の調整を続け、先端技術、製品の品質、アフターサービスなどの面での優位性を発揮して、中国の産業高度化と新興産業発展の波に呼応し、中国の消費者のニーズによりよく対応しようとしている。

非製造業のサービスモデルを革新

中国には非常に大きな消費市場がある。国民の生活レベルが向上を続けるのに伴い、中国人消費者の間で質の高い商品・サービスへのニーズが日増しに増大している。その影響で、卸売・小売、飲食・宿泊サービス、レジャー・娯楽などの非製造業の日系企業の対中投資が日本の対中投資総額に占める割合は上昇を続け、20年の26.1%から23年の49%へと大幅に上昇した。

日本銀行(中央銀行)によると、23年の日本の卸売・小売業の対中直接投資は総額830億円に達し、同年の日本の対中直接投資のうち21%を占めた。また、同商会の前出のアンケート調査によると、24年第4四半期(10-12月)には中国で家庭向けサービスを展開する日系企業の35%が対中投資を拡大すると答え、この割合は第3四半期(7-9月)に比べて27%上昇した。

同時に、日本の非製造業企業はサービスモデルの革新などを通じて、より品質の高いサービス体験を提供し、中国市場の開拓を進めている。例えば1972年という早い時期に中国市場に進出した伊藤忠商事は、これまで中国市場に根を下ろすことを目指して努力を重ね、業務分野が当初の繊維製品分野から、機械、金属、エネルギー、化学工業、食品、生活資材、情報通信、金融サービスなどに広がった。中国市場での親会社と子会社の利益を合わせると、伊藤忠商事の世界市場での利益全体のうち14%を占めている。

日本の飲食サービス産業企業も引き続き中国市場を楽観視しており、中国での市場展開を強化する上、多様なサービスを提供し、中国における市場競争力を高めている。

飲食サービス企業のサイゼリヤは03年に中国市場に進出してから安定的に発展し、ここ数年は急速に事業を拡大している。24年度決算では、同年の売上高は前年比22.5%増の2245億4200万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同58.1%増の81億4900万円。そのうち中国エリアの売上高は同25%以上増の667億7900万円で、アジア市場での売上高の8割以上を占め、グループ全体の売上高の3割近くを占めた。

また日本の有名牛丼チェーンの吉野家は、中国市場の変化に対応するため、絶えず新製品と新しいサービスを打ち出している。高齢化が進む中国の社会情勢に合わせて、嚥下と咀嚼に困難を抱えた高齢者のための介護用食品や、特定保健用食品の許可を受けたレトルトパックなどの製品を打ち出した。こうした製品は吉野家の製品ラインナップを豊富にするとともに、吉野家が介護市場で新たな成長源を生み出した。

日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所の首席代表兼所長の天野真也氏は、「中国の消費者の価値観とニーズはどちらも多様化の方向へ発展し、分野の細分化が絶えず進む。市場ニーズを的確に捉えることが日系企業にとって極めて重要になる」との見方を示した。

中国の介護産業が勢いよく発展するにつれ、介護用品、介護サービスなどのニーズが増加し続けている。研究結果によると、35年の中国シルバー経済の規模は19兆1000億元(約391兆5500億円)に上り、消費全体に占める割合が27.9%に達する見込みだ。こうした背景の中で、日系企業は介護分野の事業を拡大し、中国のシルバー経済における発展チャンスをつかもうとしている。

日立ビルシステムを例にすると、同社は実際の状況と住民の懸念を十分に考慮し、古い団地に設置できる「後付けエレベーター」を開発し、バリアフリー環境の整備と公共施設における高齢者対応の改修を推進し、古い団地で暮らす高齢者が直面する「外出困難」という問題の解決を目指している。

さらにオムロンを例にすると、同社は中国の伝統的な薬局と提携し、「標準化代謝疾患管理センター(MMC)健康ステーション」を構築し、心電計付き上腕式血圧計をはじめとするスマート医療機器を活用し、団地住民が慢性疾患管理を便利に行えるようにし、中国の消費者に効率的かつ専門的な慢性疾患管理サービスを提供している。24年末現在、MMC健康ステーションは中国28省(自治区・直轄市)をカバーする85店舗を展開している。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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