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アップルは永劫に輝き続けるテック巨人なのか、それとも新しい時代の潮流の中でかつての光沢を失いかけているのか。写真は成都市内のアップルストア。
アップルは永劫に輝き続けるテック巨人なのか、それとも新しい時代の潮流の中でかつての光沢を失いかけているのか。
アップルが発表した第3四半期決算は実に興味深いデータに満ちている。前年同期比9.6%増、940億ドル。これは2021年以来最大の四半期増益で、同社が持つ底力の証左とも言えるだろう。iPhoneの累計販売台数は30億台を突破し、まさに歴史的な節目を迎えた。
iPhoneはいまだアップルの屋台骨を支える存在だ。第3四半期決算では売上高が前年比13%増の445億8000万ドルという驚異的な数字をたたき出した。CEOは「iPhone16の人気が前モデルを上回った」と胸を張る。Macの売り上げも順調で、サービス部門は過去最高を記録し、粗利率70%超という高収益モデルが盤石に見える。
だが、華やかな業績の裏側も冷静に見つめる必要がある。表層的な好調さの奥に、次なるリスクの芽が潜んでいる。
アップルの大中華圏の売上高は153億7000万ドルで、数四半期ぶりの増加に至ったが、事は決して単純ではない。そもそも売上増加は中国政府の補助金(国補)による値下げと「618セール」によるところが大きい。補助金頼みの回復はあくまで一時的なテコ入れ策に過ぎず、実際、アップルの中国スマホ市場におけるシェアは13.9%にまで落ち込み、順位は5位に沈んでいる。
一方、「国潮」と呼ばれる中国国産ブランドを推すトレンドが浸透する中、ファーウェイ(華為技術)が新機種攻勢で1位を奪還し、OPPO、vivo、シャオミ(小米)も続々とエコシステム競争、技術革新で包囲網を狭めている。
アップルのブランド神話はかつての絶対王者から今や本土ブランドに押されるチャレンジャーへと変貌しつつある。単なる売上数字以上に、グローバル消費市場の地図がパラダイムシフトを示している象徴だといって良い。
さらに重要なのは、人工知能(AI)時代への適応だ。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は「AIは一生に一度の技術革命」と強調し、25年だけで7社のAI企業を買収したという。秋に登場予定のiPhone17シリーズにはAI機能が本格搭載される見込みだ。しかし、MetaへのAI基盤チームの大量流出やグーグル、メタが先行するAI投資額との格差は埋まっていない。
表面的な意欲ではなく、実効的なイノベーションを打ち出せなければ、アップルの成長神話はAI時代において色褪せかねない。現実に、製品ごとの「ワクワク感」は減退し、値下げとプロモーションで支える成長へと変質しているのだ。
米中貿易摩擦がもたらす関税コストも看過できない。今期だけで8億ドル、来期は11億ドルに達する。組立拠点をインドへ移す計画も品質、コストの両面で中国並みの水準には遠い。かつての世界標準のアップルサプライチェーンが揺らぎ始めている。
8月9日には、中国本土で最初のアップル直営店だった大連百年城アップルストアが閉店する。「ショッピングセンターの集客減」が表向きの理由だが、実際には現地消費環境の変化、オンライン・オフライン融合戦略への転換、現地マーケティングの修正の一環とみられる。
それでも、ウォール街やバークシャー・ハサウェイはアップルへの信頼を捨てていない。ブランド、キャッシュフロー、ユーザーの忠誠心などの強みは今も色あせていないからだ。
しかし、それだけで次の10年が約束される時代ではない。持続可能な成長は政策やプロモーションに依存した即効薬では決して達成できない。AIによる新しい価値の創出、世界市場の分断を乗り越える適応力、これらを自ら実装できるかどうかだ。まさに今、アップルは「成長神話」か「成熟のわな」か、その分岐点に立っている。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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