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中国では1枚の乗車券で複数都市を周遊できる「観光回数券」の導入が広がっている。写真は青島。
中国では1枚の乗車券で複数都市を周遊できる「観光回数券」の導入が広がっている。人気観光地を効率よく巡れるこの制度は価格の割引や予約の柔軟性といったメリットを備える。一方で、日本の鉄道移動は制度の制限が徐々に増し、比較的“不自由”な印象さえ残る。
最新の取り組みとして、中国鉄路済南局は指定ルート内で最大3区間まで利用できる夏季限定の観光きっぷを発表した。
対象は「青島-威海-煙台」「済南-淄博-潍坊-青島」「済南-曲阜-泰安-済南」「済南-青島-煙台」の4ルート。いずれも沿線の観光地を効率よく結ぶ設定となっている。
この商品は主に観光客を対象としており、高速鉄道を組み合わせることで価格の割引と柔軟な利用条件を実現した。初回乗車は購入後30日以内、全行程は9日以内に完了する必要がある。未使用であれば全額返金も可能だ。
利用には中国鉄道の公式アプリ「12306」を用いる。トップページにある「計次・定期票」メニューから「旅游」を選択すると、提供されているルートと価格の一覧が表示される。
画面はシンプルで直感的に操作でき、各ルートの区間構成と価格が一目で確認できる点も利便性が高い。
では、実際どの程度お得なのか。例えば「青島+威海+煙台」ルートでは、3区間を個別に購入した場合より約2割安くなる。観光ルートとしての実用性と価格メリットのバランスが取れている。
一方で、「杭州+千島湖+黄山」のように、3区間の合計が通常237元(約4700円)に対して回数券価格は212元(約4200円)程度と、割引率は1割強にとどまるケースもある。すべてのルートで均等な割引が受けられるわけではなく、選択には事前の比較が肝要だ。
中国の制度と比較して印象的なのが、日本国内の鉄道移動コストの高さだ。例えば「杭州東-千島湖」間の営業距離は約172キロで、日本の「東京-静岡」間(180.2キロ)とほぼ同等。しかし、中国側は約1400円(二等座)に対し、日本の新幹線では自由席でも5940円を要する。
場合によっては金券ショップなどで株主優待券を購入したり、「ぷらっとこだま」などのサービスを利用したりするなどの節約術もあるが、それでも割引率は限定的だ。
新幹線を割安で広域利用できる「ジャパン・レール・パス(JRパス)」はあるが、これはインバウンド向け商品で、日本人には基本的に開放されていない。在外邦人の場合は在外居留期間(同一国で10年以上)など高いハードルが設けられており、申請・購入がしづらいサービスとなっている。
なお、近鉄が外国人観光客だけでなく在外邦人も利用できる周遊券を提供しているが、こちらは私鉄で、新幹線とは無関係だ。
かつて国内鉄道旅行の味方だった「青春18きっぷ」も、近年その使い勝手に陰りが見える。2023年冬分から利用ルールが変更され、長距離移動や日帰り旅行との相性が悪くなった。
結果として、日本国内で気軽に鉄道旅行を楽しむ選択肢は以前より狭まりつつあるといえるかもしれない。中国では観光と鉄道を結びつけた柔軟かつ戦略的な商品設計が続々と打ち出されている。制度設計の自由度と顧客視点の発想という点で、日本の鉄道が見習うべき点もありそうだ。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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