【観察眼】アートトイで世界をつなぐ、「ポップマート」に見る中国経済の底力

CRI online    2025年8月1日(金) 13時50分
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ぬいぐるみ型のキャラクター玩具「ラブブ」が世界中でブームを巻き起こしている。

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2025年、ぬいぐるみ型のキャラクター玩具「Labubu(ラブブ)」が世界中でブームを巻き起こしている。これを手掛けているのは、IP(知的財産)ビジネスを展開する中国企業・ポップマート(泡泡瑪特国際集団)だ。創業者の王寧氏は先日、チャイナ・メディア・グループ(CMG)の独占インタビューに応じ、「世界中な需要の高まりに応えるため、Labubuの生産体制を拡充しており、今年9月以降は月間1000万体以上の販売を見込んでいる」と語った。

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1987年生まれ、38歳の王氏は、2010年にポップマートを創立。それからわずか15年で世界的なIPを有する企業へと急成長を遂げた。2020年12月の香港上場からわずか4年あまりで時価総額が3000億香港ドル(約6兆円)に達し、投資家の注目も集めている。


ポップマートの成長の背景には、いくつかの要因がある。

まずは、ゼロから市場を創出したチャレンジ精神が挙げられる。「アートトイ(中国語では「潮流玩具」)」という、それまでに中国ではあまり知られていなかった分野に挑戦し、自ら市場を開拓した点である。

創業当初のポップマートは、「トレンド雑貨のセレクトショップ」としてスタートし、さまざまなデザイナーズアイテムを取り扱っていた。2015年、王氏は、取扱商品の一つだった日本のIP「ソニー エンジェル」の売上高が単一店舗の3割強を占め、安定した顧客層と高いリピート率を有していることに着目。そこに商機を見いだし、それまでの「広く浅く」という戦略を捨て、「アートトイ分野に特化」する戦略へと転換した。大人も楽しめる玩具「アートトイ」という新しい概念を中国で普及させるため、ポップマートは2017年に第1回北京国際アートトイ展を開催。今ではアジアを代表する業界イベントに成長し、中国でのアートトイ文化の普及にとどまらず、業界基準の確立や多くの雇用創出にも貢献している。

ポップマートの成長を支えるもう一つの要因は、中国の巨大市場と強じんな製造力が挙げられる。昨年末時点でポップマートの中国本土での会員登録者数は4600万人を超え、国内店舗数も400カ所を上回った。また、中国の高度に発達した製造業もIPのデザインから量産化までを効率的かつスピーディに実現している。とりわけ、広東省東莞市は「アートトイの街」とも呼ばれ、ポップマート製品の約7割を生産。ここでは、市内にある500社以上の工業デザイン会社がキャラクタースケッチをすばやく3Dモデルに変換し、4000社以上の玩具メーカーが、設計から製造、流通、納品までを担う完全なサプライチェーンが形成されており、企画から製品化までを最短15日で実現可能としている。厳格な品質検査も徹底されており、世界に向けて高品質の製品を提供する体制が整っている。

さらに、ポップマートは、「世界と共に成長する」という明確なグローバル戦略を掲げている。「From the world to the world(世界から世界へ)」という企業理念に基づき、世界中のアーティストとコラボレーションし、中国の製造力の強みを活かして、国際市場でIPビジネスを展開する独自のビジネスモデルを確立している。王氏は、ディズニーやユニバーサル・スタジオといった業界の先達との関係について、「競争ではなく協業」と強調し、「例えば、ポップマートのキャラクターにミッキーマウスの服を着せることだってできる」と語っている。こうした柔軟で開かれた姿勢が世界の市場での信頼を勝ち取り、海外進出も着実に進んでいる。

ポップマートが運営する北京のテーマパーク「POP LAND」

2023年には、北京で自社IPを活用したテーマパーク「POP LAND」を開業。現在、米国を始めとする多くの映画制作会社から、ポップマートのキャラクターを起用した映画製作のオファーが相次いでいるという。これに対して、王氏は、「今後の展開については方向性を見定めながら慎重に検討していく」と答えるにとどめている。

こうした海外展開が進む中で、ポップマートが目指す未来像にも微妙な変化が見え始めている。かつて掲げていた「中国のディズニーになる」という目標が、「世界のポップマートになる」というビジョンへと転換しつつあるのだ。そこには、国際展開における一定の成果と、自社のビジネスモデルに対する確かな自信がうかがえる。

創業からわずか15年で世界に存在感を示すまでに成長したポップマート。広い視点から見れば、中国経済の台頭を背景に誕生した数多くの起業物語の一つに過ぎない。しかし、これは中国の若い起業家が新たな分野に果敢に挑み、自らの力で新たな成長市場を切り拓き、世界のトレンドと中国独自の強みを巧みに融合させて作り上げたサクセスストーリーでもある。このようなチャレンジャー精神こそが、これまでの中国の経済を支えてきた底力と言える。そして今後も、このような物語が次々と生まれてくることを期待したい。(提供/CRI

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