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中国仏教界で最も世俗的な人物として知られた嵩山少林寺の住職、釈永信が27日、寺院資産の横領や複数の女性との不適切な関係を理由に調査対象となり、拘束された。
中国仏教界で最も世俗的な人物として知られた嵩山少林寺の住職、釈永信(本名・劉応成)が27日、寺院資産の横領や複数の女性との不適切な関係を理由に調査対象となり、拘束された。翌28日には中国仏教協会が釈永信の僧侶資格(戒牒)の抹消を決定した。この報は日本にも伝わり、主要メディアが相次いで報道し、大きな波紋を呼んでいる。
映画「少林寺」(1982年)が東アジアを席巻し、その名声が嵩山の山奥にまで届いたとき、そこにいたのが若き釈永信だ。釈永信はその熱気を嗅ぎつけ、ただの寺男に甘んじることなく、「経を唱える手でビジネスも握る」異才として立ち上がった。
釈永信はやがて日本を訪ねるようになる。複数回の訪日を重ね、日本の寺院経営や宗教法人の運営手法を精緻に観察したといわれる。明治維新以降の日本仏教の世俗化、企業的経営手法、ブランド戦略を学び、次々と実行に移していく。
1996年に公式ウェブサイトを開設、1997年に河南少林寺実業発展有限公司を設立、1998年に河南少林寺形象宣伝管理有限公司を設立、2003年に少林薬局を復活、2008年に河南少林無形資産管理有限公司を設立と、商業化は段階的に進められた。
釈永信のもとにはやがて700件を超える「少林」商標が集まり、寺の敷地内外ではお香、茶、薬、さらにはTシャツや腕時計までもが「禅」の名のもとに売られていく。海外企業18社への投資を統括する河南少林無形資産管理有限公司を通じて、50カ国以上にネットワークを展開。「袈裟を着たCEO」と呼ばれた釈永信の手法はまさに現代的な宗教ビジネスの典型だった。
だが皮肉なことに、この「少林寺」という世界的ブランドの礎を築いたのは、中国ではなく日本の方が先だったともいえる。
日本が敗戦して間もない1947年10月25日、香川県多度津町の小さな町で『少林寺拳法』を創始したのは、宗道臣(故人、本名:中野理男)。昭和の日本を代表する武人だ。
宗道臣は戦前中国で特務機関に従事し、その間に義和門拳をはじめとする中国武術を学んだ経験を持ったと伝えられる。北少林義和門拳の第21代正統継承者とされ、生前、嵩山少林寺の壁画に触発されたと語っている。しかし実際に宗道臣が体系化した少林寺拳法は、中国拳法の直接的継承というより、技法的には大東流合気柔術などの日本武術の影響が色濃いというのが通説だ。中国の少林拳とは技術体系や目的、歴史的背景が大きく異なる独自の武道として発展を続けている。
宗道臣が創始した少林寺拳法は、精神修養、人づくりコンセプトとして戦後復興期の日本で急速に普及し、やがて海外にも展開された。一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITYの公式サイトでは、「世界で一つの少林寺拳法」をスローガンに掲げ、その独自性を強調している。
だが多くの外国人にとって、「少林寺拳法」は中国の「少林拳」と同一視されがちだ。結果的に少林寺拳法の普及は中国の少林寺の認知度を広げるのにも役立っているに違いない。
少林拳は中国武術の源流、一大体系として世界に広がる伝統武術。少林寺拳法は日本独自の武道・教育システムとして発展した現代武道。この違いを理解している人は意外に少ない。
さらに複雑なのは、日本には少林寺拳法とは別に、少林寺流拳法という組織や、武術とは関係がないものの、仏教の達磨祖師の故事にちなんで少林寺の名を冠する寺院も多数存在することだ。一説にはその数は63にも上るといわれている。
少林寺を題材にしたエンターテイメント作品は数多いが、その先駆けとなったのは映画「少林寺拳法」(1975年・千葉真一主演)だろう。宗道臣の波乱の半生が描かれ、一世を風靡した。そして、李連傑(ジェット・リー、リー・リンチェイ)主演の「少林寺」シリーズがブームに拍車をかける。
「南拳北腿(南は手技、北は足技)」という中国武術の分類はよく知られるところだが、「南北少林」(日本では「阿羅漢(あらはん)」の作品名で放映)で南少林寺が登場するのは興味深い。そのほか李連傑とは関係がないが、1992年に公開された香港映画「東瀛遊侠」(于栄光、楊麗菁主演)では、日本の空手のルーツを南少林に求める筋書きもあった。
南少林については歴史的に諸説ある。伝説的要素が強いとされる一方、研究者の間ではその実在性を巡って意見が分かれているという。福建省の莆田、泉州、福清に建つ複数の南少林寺は1990年代に再建されたものであり、その存在の是非も研究対象の一つとなっている。果たして、南少林寺の実在性を示唆する決定打が現れるのかどうか興味深いテーマだ。
「南北少林寺」の存在そのものがまだ秘密のベールに包まれている中で、嵩山少林寺を唯一無比の国際ブランドとして昇華させたのは、他ならぬ釈永信だ。荒れ果てた寺を整備し、世界ツアーを展開し、ネット通販を開き、寺を企業に変えた。あらゆる意味で少林寺を押しも押されぬキラーコンテンツに押し上げていったのだ。
だがその成功の果てに、本来あるべき仏門の精神性はどこへ行ったのだろうか。「袈裟を着たCEO」による経営手腕がもたらした発展の裏で、信仰の私物化が疑われた。ザンビアに「アフリカ少林寺文化センター」が置かれるように、世界には少林寺を学び、敬う者がいる。揺らぐ象徴を前に、「何を信じ、誰を信じるのか」という問いが突きつけられている。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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