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スイスのフランス語圏であるローザンヌで開催されている「ローザンヌ国際漫画祭」では、日本の漫画が欧州フランス語圏に渡ってからの50年の歴史と受け入れ側の土壌が紹介されている。
スイスのフランス語圏であるローザンヌでは今、「ローザンヌ国際漫画祭」(BDFIL)が開催されている。5月に始まり11月までという長丁場のイベントだ。今回のBDFILでは、日本の漫画が欧州をはじめとするフランス語圏に渡ってからの50年の歴史を回顧する展示に力が入れられている。フランスメディアのRFI(中国語版)が伝えた。
フランス語圏の漫画ファンは、自分たちの愛する漫画芸術がフランスやベルギーなどで長らく軽視されてきたとしばしば語る。例えば1979年に発表された「グレンダイザーの失敗」と題する一文は、日本の漫画のヒーローであるグレンダイザーを嘲笑したが、現在では日本の漫画作品はフランス語圏の読者に熱烈に支持されている。
一方で、フランス語圏の漫画家は、70年代に欧州に入ってきた日本の漫画を当初から熱烈に支持し、漫画を「第九の芸術」と称した。この「第九の芸術」の概念は、漫画文化の推進者であり研究者でもあったピエール・クペリエ氏やクロード・モリテルニ氏が60年代に提唱したものだった。ちなみに、第1の芸術から第8の芸術までは「建築、彫刻」「絵画など視覚芸術」「音楽」「文学」「演劇や舞踊など舞台芸術」「映画」「テレビや写真などのメディア芸術」を指す。
BDFILでは、その一環として日本の漫画がフランス語圏の漫画芸術に与えた影響を示す催しが次々に開催されている。その際には、フランス語圏のアニメ先駆者による芸術的挑戦や手描きの技術も際立っており、幅広い芸術環境があったからこそ、漫画芸術は欧州で発展することができたとも紹介されている。フランス語圏では日本の漫画が紹介される以前から「アステリックス」や「タンタン」という定番キャラクターが存在し、80年代にはフランスやベルギーの漫画家の作品を掲載した雑誌がヨーロッパで非常に流行した。その上に、翻訳された日本の作品が加わることになった。
BDFILでのある紹介によると、78年は欧州、特にフランス語圏の漫画文化にとって、極めて重要な年だった。日本の漫画を紹介するフランス語誌が初めて登場したからだ。スイスのフランス語圏で発行された「ル・クリ・キ・テュ(殺しの叫び)」で、6号までしか続かなかったが、石森ノ章太郎(1938-98年)、さいとう・たかを(1936-2021年)、辰巳ヨシヒロ(1935-2015年)、手塚治虫(1928-89年)といった優れた漫画家の作品を翻訳し、場合によってはアレンジを施して紹介した。この雑誌は欧州に向けて日本の漫画を紹介した初めての試みだった。
「ル・クリ・キ・テュ」を創刊したのは、日本人のアトス・タケモト(本名は竹本元一)と、出版関係者のロルフ・ケッセルリングで、いずれもスイスのフランス語圏にいた人物だった。日本の漫画作品を掲載した「ル・クリ・キ・テュ」は、当時のカウンター・カルチャーの旗手になった。
2人が「北風が黒馬のようにいななく」のタイトルで紹介した石ノ森章太郎の「佐武と市捕物控」の中のエピソードは、「現存する最古のフランス語版の日本の漫画作品」として、今回のBDFILで展示された。
BDFILは、フランスで1978年から永井豪原作の「グレンダイザー」シリーズがテレビ放送されたことも紹介した。この放送は、フランス語圏の子供の日本漫画への熱狂をかき立てた。BDFILの一環として開催された別の展示会では、ローザンヌ漫画センターが所蔵する雑誌や出版物を通じて、フランス語圏の出版社が漫画の輸入やマーケティングにおいて発揮した専門性やその変遷をたどった。
60年代末の武道雑誌に印刷された初期のフランス語漫画や、フランス語圏の老舗であるベルギーのカステルマン社が若年層向け漫画に力を入れた事例、さらには欧州の企業家がアニメを使った商品展開に取り組んだ事例、たとえばカマンベールチーズの箱に永井豪の「グレンダイザー」を印刷したことなどだ。
2023年にはフランス国内の漫画販売数が4000万冊に達し、フランスは日本に次ぐ世界第2の漫画消費国となった。
今回のBDFILの学芸員は「フランス語版の漫画の翻訳や改編では、西洋の読書習慣に合わせた細部への配慮が見られます。以前のフランスメディアは日本の漫画に対して、一種の軽視とも言える態度を見せていましたが、フランス語版の読者が増え、またフランス語圏の漫画家も参加するようになったことで、メディアもようやくフランス語漫画の大きな成功に正面から向き合うようになりました」と説明した。
フランスやベルギーの漫画作品は、海を渡ったフランス語圏であるカナダのケベック州でも人気が非常に出て、大勢のファンを抱えるようになったという。(翻訳・編集/如月隼人)
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