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「こんな花火大会、欧さんと一緒に見られればよかったのに……」という山本さんの声が、ビデオから聞こえてきた。
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仲の良い友達と離れ離れになったとき、その友達の生活を「没入型体験」することができれば、友達とずっと一緒にいるような気持ちになれるのではないだろうか。
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大学の国際文化祭で、私は日本人留学生の山本恵さんと知り合いになった。私たちはバドミントンをすることが好きなので、毎日授業後、一緒に体育館に行ってバドミントンをした。しかし残念なことに山本さんは4カ月間だけの中国留学だったので、昨年6月に日本に帰っていった。多くの日本人の友達と知り合ったが、彼女だけはずっと連絡を取り合っていたかった。
しかし、私はすぐに日本に留学する考えはなかったし、山本さんも日本で就職することになったので、彼女の顔を見る機会がますます少なくなるかもしれないことに気がついた。彼女も同じ気持ちのようだった。私たちは相手とこのまま別れるのは惜しいと思った。だから、私たちはそれぞれの国での日常生活を分かち合うことにした。
昨年7月に、山本さんは4年ぶりとなる東京・隅田川花火大会のライブ中継をしてくれた。スクリーン越しに万人通りの熱気と花火の素晴らしさを感じた。花火が夜空に打ち上げられパッと咲いて、シュッと散った。最後の花火が夜に消えた瞬間に街の灯りも消えてしまった。
隅田川の美しい花火を見て色々なことを思い出した。私は山本さんが中国にいた時、一緒に春節を過ごしたことを思い出した。その時、私たちは中国で花火を見て、お年玉を交換した。ちょっと残念だったのは、もっとリアルに見ることができれば、より豊かな気持ちになれるのではないだろうかということだ。
「こんな花火大会、欧さんと一緒に見られればよかったのに……」という山本さんの声が、ビデオから聞こえてきた。「そうだよね……別の国にいるし、就職したらもうそんな機会がないだろうし……」私も残念な気持ちになった。そして山本さんが送ってくれたビデオを見ているうちに、発達したAIで、まるでその現場にいるような「没入感」を与えてくれるVR体験を提供するプラットフォームがあればいいと思った。
その世界で遠く離れた友達と一緒にいることができる空間だ。まるで現実の世界のような花火大会で素敵な浴衣を着て、河原に座って、屋台で買ってきた美味しいものを食べながら、山本さんと花火を見たいと思った。
遠く離れているのに、その瞬間を一緒に実感できるそんな「没入型体験」ができるAI技術によるVRプラットフォームだ。日中交流にもこのプラットフォームが役に立つと思う。VRの没入体験で文化交流をすることで両国人民の感情を結びつけ、中日友好のために両国人民の力を集めるのに役立つだろう。
このプラットフォームでは、東京の18歳の大学生など、特定の日本人キャラクターを自分で設定することもできる。私たちは日本の大学生が何を学んでいるのか、普段どんな大学生活を送っているのかを知ることができる。
私と山本恵さんは自分の学校のバドミントン場に行って、私はこちらにいて、彼女はネットの向こうにいて、このプラットフォームを通じて、私たちは異なる国で一緒にバドミントンをする願いを実現することができるかもしれない。
VRの没入体験のプラットフォームは「中国人の日本語作文コンクール」にも活用できると思う。日中両国の学生が参加し、AI技術を活用して趣味や文章スタイルなどが合った異国の学習パートナーを見つける。没入体験の世界で顔を合わせてグループを作って、中国人に日本語作文の話題と素材を提供し、日本人に中国語作文の話題を提供する。没入体験のプラットフォームでの体験自体も作文の題材になるに違いない。
現在発達しているAI技術では、このようなプラットフォームを構築し、日中両国の間で広く普及させることができると思う。そうすれば山本さんに「今年の隅田川の花火にVRの世界で一緒に行かない?」と声をかけることができるだろう。
■原題:ここを没入型体験しよう
■執筆者:欧芊序(大連外国語大学)
※本文は、第20回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「AI時代の日中交流」(段躍中編、日本僑報社、2024年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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