生活に潜む鉛のわな、激安スマホケースにも警鐘

邦人Navi    2025年7月18日(金) 16時50分

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鉛の脅威は決して一部の地域や特定の年齢層に限られたものではない。安価なスマホケース、日用品、住まいの塗装や水道管など、私たちの日常の隙間に潜んでいる。資料写真。

甘粛省天水市で発生した幼稚園児の鉛中毒事件は食品の安全管理や社会的監視体制の重要性を突きつけた。鉛の脅威は決して一部の地域や特定の年齢層に限られたものではない。安価なスマホケース、日用品、住まいの塗装や水道管など、私たちの日常の隙間に潜み、家族の健康をむしばんでいるリスクがないか目を光らせる必要がありそうだ。

生活の隙間に潜む鉛リスク

身近な生活空間に知らぬ間に鉛リスクが忍び込んでいることがある。その代表的な例として注目を浴びているのが廉価なスマートフォンケースで、例えば郵送料9.9元(約200円)程度で販売されている製品だ。

浙江省の調査では、市販スマホケースの3割から安全基準の30倍を超える鉛が検出された。日本でも、安価なアクセサリーや陶器、リサイクル建材に高濃度鉛が混入する例がある。老若男女問わず、誰もが日々の暮らしの中で「静かな曝露」を続け、健康被害が家庭全体に広がる可能性は否定できない。

甘粛省の事件に見る警鐘

甘粛省天水の幼稚園で園児200人以上が血中鉛濃度の異常を示した大規模な鉛中毒事件に注目が集まっている。園内で提供された「三色棗発糕(棗を原料とする蒸しパン)」に基準値の5000倍にも達する顔料が含まれていたことが中毒の原因となったという。

多くの子どもが長期入院を余儀なくされ、食品・日用品の安全確認が「形だけ」になっていないか、社会全体に問い直すきっかけとなった。

健康をむしばむ症状と慢性リスク

鉛は子どもの発達障害や学習能力低下をもたらし、1デシリットル当たり5マイクログラム(5μg/dL)を超えるだけでIQが2~3ポイント低下するという。脳や神経、腎臓、造血機能などをむしばみ、大人にも高血圧や腎障害、不妊症といった慢性リスクがあるようだ。

厄介なのは初期症状が目立たず、自覚症状を持つ頃には長期の健康被害をもたらしているケースが珍しくないことだ。鉛のリスクは老若男女を問わない共通課題というわけだ。

古代ローマから歌舞伎役者まで

古今東西、鉛が「見えない毒」として人間社会に深い影を落としてきたことは、古代ローマ帝国衰退の経緯に関する諸説や、日本の歌舞伎役者や皇族が中毒にかかるケースが多かったとする言い伝えからも容易に推察される。

ローマ時代、水道管やワイン、化粧品に鉛が広く使われ、皇帝や貴族の骨からは現代人の10倍以上の鉛が検出されている。慢性的な中毒が帝国の命運にも影響したとする説は根強い。日本でも江戸から明治にかけて鉛入り白粉が原因で役者や皇族に健康被害が相次ぎ、1934年には製造・販売が禁じられた。

鉛リスク対策と展望

鉛による健康被害から免れるためには、日用品や食品の表示確認、水道管の点検、疑わしい製品の排除など、まずは家庭でできる対策を徹底したいところだ。

一方、違反事例の公表や規制の強化を進めるといった行政上のアプローチや、社会全体で「鉛フリー」の意識の向上を働きかけていくことを求める声も高まっていきそうだ。古代から「便利さ」と引き換えに健康を犠牲にする構図が何度も繰り返されてきた歴史を、今一度ひも解いてみるだけでもさまざまな示唆が得られるかもしれない。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

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