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パリで開催されたユネスコ第47回世界遺産委員会で11日、中国・寧夏の「西夏王陵」が世界文化遺産に加わった。
パリで開催されたユネスコ第47回世界遺産委員会で11日、中国・寧夏の「西夏王陵(西夏陵)」が世界文化遺産に加わった。西夏は、かつてタングート族が築き、モンゴル帝国に飲み込まれ歴史のかなたに消えた王朝だ。その王らの眠る陵墓がついに世界遺産の仲間入りを果たした。
「西夏王陵」が正式に世界文化遺産として登録され、これで中国の世界遺産数は文化遺産40、自然遺産15、複合遺産5の合計60件に達した。「現存あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する唯一の、あるいは少なくとも卓越した証拠を提供するもの」というユネスコの世界遺産登録基準の「基準(iii)」に該当するという。
今回の審議では、アジアからは「西夏王陵」以外に、韓国の盤亀川岩壁画、カンボジアの慰霊碑、ベトナムやタジキスタンの文化景観などの遺産が新たに登録されたと報じられているが、日本からの新規登録はなかった。
寧夏回族自治区首府の銀川市西郊にある賀蘭山の山裾に点在する皇帝陵9基と副葬墓254基はピラミッド状に盛られた土の墓塔と石彫で構成される。タングート族の遊牧文化と仏教の影響が融合した造形美を今に伝える。
敷地内にある西夏博物館では出土品や壁画、碑文、西夏文字の実物が展示されており、文化的価値を体感できるスポットになっている。
西夏王朝が神秘のベールで包まれているのは「西夏文字」の存在があるからだろう。漢字のようでありながら、漢字ではない。会意と象形のバランスを絶妙に崩した直線と曲げが多い不思議な形状が特徴だ。
画数が多く、数字を書くにも筆を何度も往復させねばならない。ちなみにチベットを高原を挟んだ西南に位置するミャンマーでは、角がとれて丸みを帯びたビルマ数字が存在する。両者のコントラストはユニークだ。
井上靖の原作を基に制作された1988年の日中合作映画「敦煌」は西夏王朝の存在と文字を日本人に伝える数少ない文化装置といえるだろう。監督は佐藤純彌、主演は佐藤浩市、西田敏行。時代は11世紀、舞台は敦煌と西夏。科挙に失敗した青年が西夏文字と向き合っていく姿は、歴史と人間の営為の交差点を描き出していた。
物語の時代背景となった11世紀はすでに遣唐使が廃止されており、日本には西夏と交流できるチャネルはなかった。しかし、時代が下り、西夏の存在を世界にアピールする上で日本が一役買っているのはユニークなことではないだろうか。
石碑や写経などに刻まれた西夏文字は、今日では人工知能(AI)や光学文字認識(OCR)技術によって速やかな解読が行われるようになった。中国社会科学院・西夏学研究センターや寧夏大学などが中心となり、AIを活用して仏典の断片を高速で読み取り、類似形状の文字を照合・復元する作業が行われている。
なお、西夏王陵を訪れる際のゲートウェイとなる銀川の空港や駅へは、上海を起点にすると空路で3時間強、鉄路(高速鉄道)で11時間余り。西安からのアクセスなら所要時間は4時間強といったところだ。高速鉄道が普及する前は上海から西安に移動するだけで寝台車で丸1日かかった。そう思うと隔世の感があるが、神秘のベールに包まれていた「西の果て」は、この四半世紀だけでも格段に近くなっている。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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