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青島や鄭州で進む「複合利用モデル」に熱い視線が向けられている。
配達遅延や再配達といった「物流の詰まり」は都市生活を支えるインフラのボトルネックだ。こうした中で、中国の地方都市が示す斬新な取り組みがある。公共交通インフラを物流輸送に転用する。青島や鄭州で進む「複合利用モデル」に熱い視線が向けられている。
青島地鉄8号線で7月に前例のない試みが始まった。順豊速運(SFエクスプレス)との連携により、地下鉄車両が宅配便を運び始めたのだ。注目すべきはその経路だ。市内から青島北駅を経由し、地下鉄で海底トンネルを通り、膠東空港駅に到着。その後、空港に連携する。
物流用の特製ケージが夜間の列車に積載され、わずか37分で空港側の駅に到着。そこから無人配送車と航空網へと接続される。この一連の輸送で、従来の貨物トラックに比べて輸送時間が55%以上短縮することになる。
また、地下鉄ネットワークの非稼働時間帯や空きスペースを活用することで、CO2排出の削減や交通分散効果も期待されている。まさに「地上・地下・空中」を一体化した三次元型のスマートロジスティクスの先例だ。
一方、内陸部の交通要衝・鄭州(河南省)では、公共バス(路線バス)と順豊の提携が進む。焦点は昼間に通勤者を運ぶバスが夜間に都市内物流を担う車両へと変身することだ。
これらの車両を活用し、小口配送や即日配送の荷物を運ぶ移動型都市内配送手段として試験運用が始まっている。さらに注目すべきは、バスターミナルそのものを物流拠点に再定義している点だ。
場内には自動仕分け機、前置倉庫、宅配ロッカー、ドローン発着場の設置も構想され、ラストマイル配送(物流における最終段階の配送区間)を支えるハブ兼市民サービス拠点としての役割を担おうとしている。出勤ついでに荷物を出せる、帰宅途中に自分で受け取れる、そんな都市像がここにある。
青島、鄭州のモデルに共通するのは、都市インフラの複合活用と知能化による効率の最大化だ。地下鉄や公共バスが人を運ぶだけのツールではなくなった。余剰空間や非稼働時間こそが都市物流の空白地帯を埋めるカギになる。
人工知能(AI)による需要予測、IoT (Internet of Things)による荷物追跡・輸送管理、無人配送車・ドローンによる末端輸送が組み合わさることで、高精度・低コスト・低炭素の物流ネットワークが構築されつつある。
日本でも「貨客混載モデル」が試験的に導入されている例はある。駅弁や医薬品、コンビニ商品の配送を電車で運ぶ方法だが、これらは鉄道会社主導の小規模なものだ。移動と物流を統合したMaaS(Mobility as a Service)や都市物流統合という観点で地方政府、交通機関、物流企業が一体となって取り組む都市構造の再設計のレベルには至っていない。
注目すべきは、スマートロジスティクスで先行する深センや杭州だけでなく、新たなインフラ整備に依存せず、既存機能を組み替えることで社会を再設計を図る都市が現れてきたことだ。青島や鄭州の事例が示すのは、既存の移動ツールそのものが未来型物流の一部だという視点への転換が問われていることだろう。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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