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シンガポール華字紙・聯合早報は5日、20匹以上の猫を虐殺したとして公務員資格を取り消された中国の大学生について報じた。
シンガポール華字紙・聯合早報は5日、20匹以上の猫を虐殺したとして公務員資格を取り消された中国の大学生について報じた。
広西チワン族自治区桂林市の人力資源・社会保障局は6月中旬、公務員の採用名簿を発表。その中に「蘇志鵬(スー・ジーポン)」という名前があった。彼は筆記試験199.5点、面接84.3点の総合成績1位で、同市平楽県同安鎮の職員として内定を受けていた。ところが、一部のネットユーザーが「彼は昨年に華中農業大学で起きた猫毒殺事件の当事者ではないか」と指摘したことから、騒動が広がっていった。
昨年10~11月、同大学の学生が薬を粉末にして水に溶かし、野良猫に与えて数十匹を死亡させた。一部の猫は口に腐食液(金属などを溶かす液体)を注がれたり、四肢を折られたりといったむごたらしい状態で発見された。さらに人々の怒りを買ったのが、当事者の学生がSNSでその様子を誇示する一方、「猫の様子がおかしい」などと善意を装って動物保護のチャットグループに知らせていたことだった。
同大学は昨年12月にこの件に関する調査報告を発表したが、その当事者の名前こそが蘇志鵬だった。しかし、同大学は厳重警告処分としただけで除籍はせず、彼はそのまま卒業、学位の取得に至った。残忍な猫虐殺事件から半年余り、彼の名前が公務員の採用名簿に上がったことで再び世論の注目を集めることになり、内定先の同安鎮も「蘇志鵬」が猫虐殺事件により処分を受けた学生本人であることを認めた。
SNS上では「精神に異常がある」「道徳観に問題がある」「猫を虐待した人間が公務員に?」「公務員のハードルってこんなに低かったのか?」といった批判の声が相次いだ。一方で、中国国営の「環球時報」の元編集長・胡錫進(フー・シージン)氏は猫の虐待については批判したものの、「過ちを犯した人を世論が長期にわたって追い詰め続けるべきではない。やり直しの機会を与えるべき。採用可否はそれぞれの機関が判断すべきであり、世論が一律に否定するのは避けるべき」と主張した。
しかし、同じく国営メディアの中国新聞網は評論記事を掲載し、「『猫を虐待した受験者に改心の機会を与えるべき』という主張は、採用取り消しに反対する理由にはならない。ネット世論による監督も、採用機関の法令に基づく処理も、いずれも公務員に求められる基本的な品行に対する社会の正当な期待である」と、胡氏の考えに異を唱えた。
事態が物議を醸す中、上級機関の桂林市人力資源・社会保障局が今年6月30日に「事実確認を行っている。不適格者は採用しない」と表明。翌7月1日には平楽県が「蘇志鵬氏は採用条件を満たしておらず、すでに採用資格を取り消した」と発表した。
聯合早報の記事は、中国で近年、動物虐待事件が相次いでいると指摘。米CNNの報道を引用し、「中国国内のテレグラム(匿名SNS)で2023年6月から24年2月に猫の虐待動画の投稿数が5倍に急増した」「悪質なのは、こうした動画が有料でオーダーメイドされている点。依頼者が希望する猫の種類や虐待方法を指定し、それに応じて動画制作者が撮影を行う。中には猫を火であぶる、生きたままミキサーにかけるといった極めて残虐な行為も含まれており、加害者はその界隈で有名人扱いされている」などと伝えた。
その上で、「動物虐待の加害者に対して世論が批判を強める背景には、良心に反するというだけでなく社会的リスクが潜んでいるという見方もある」と言及。1997年にマサチューセッツ州動物虐待防止協会とノースイースタン大学が共同で発表した研究で、動物を虐待する者はしない者に比べて他人に危害を加える割合が5倍高いとの結果が示されたことを紹介した。また、2013年の別の研究でも、米国の大規模殺傷事件の加害者の43%が事件前に犬や猫などの動物を虐待していたことが示されたことを伝えた。
そして、「こうした事件が起こるたびに世論は厳罰か、寛容かの間で揺れ動くが、中国において実効性のある動物保護法は未だに存在せず、実際に加害者に対して法的にできることは限られている」と指摘。中国における関連の法律は、希少種や絶滅危惧種の保護を規定する「野生動物保護法」のみで犬や猫といった一般的な動物は対象外となっており、「治安管理処罰法」などを適用して取り締まることもあるが警察による対応も軽微な行政処分にとどまっているため抑止力になっていないと伝えた。
記事は、動物保護法の制定を求める意見は中国国内のメディアからも上がっていると紹介した上で、「感情に任せた議論を繰り返すばかりでは真に問題を解決することはできない。今こそ、中国社会が法整備によってこの問題に正面から向き合うべき時である」と論じた。(翻訳・編集/北田)
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